兼岩正夫『封建制社会』(岩波新書 1973)を読む。
ゲルマン民族移動後から宗教改革までの暗黒のヨーロッパを、政治や経済、文化、そしてキリスト教など多くの側面から光を当てている。ローマ帝国崩壊から15世紀あたりまで、ヨーロッパの中心は東ローマのビザンツ帝国であり、イスラム教のオスマントルコであった。それに対してフランク王国やノルマンディー公国などは辺境に過ぎなかった。しかしそうした辺境のヨーロッパであったからこそ、ローマ帝国の文化を引き継ぐことが出来た。さらに、イスラム勢力の圧力が強まれば強まるほど、キリスト教を結集軸として国家の形成が促されてきた。イギリス、フランス、ドイツで宗教革命が起こり、それを契機に都市国家が形成され、産業革命が生まれたと、世界史の教科書はあたかも歴史の必然的な流れであったかのように説明する。しかし、ヨーロッパが世界を制するなんていう結果はあくまで歴史が生んだ偶然に過ぎないのではないか。
『封建制社会』
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