高橋哲哉・大内裕和・三宅晶子・小森陽一編『教育基本法「改正」に抗して』(岩波ブックレット 2004)を読む。
今国会でも可決が危惧される教育基本法改悪の動きに抗して、2003年12月23日の日比谷公会堂で行われた「教育基本法改悪反対! 全国集会」の模様を再構成したブックレットである。近年各現場で進められる管理的抑圧的な教育改革と、それに呼応した教育基本法改悪、さらに日本国憲法改悪ともリンクする一連の新自由主義的教育再編全般に対して、全国各地からの反対の声が多数まとめられている。
いささか現状の教育の在り方が是であり、改悪される教育に反対するだけの「保守」的な論調も目立つ。目指すべき教育の理念を具現化する実践が求められる。
京都の在日朝鮮人の高校生朴さんの訴えが印象に残る。『たくましい日本人の育成』を目指す教育改革の中で、自分を含めた家族全員の存在が教育から消されてしまったと感じる朴さんは次のように述べる。
私は、やはりおかしいと思ったことには頷けない。たとえ存在を消されても、消えてしまうことなんてできない。そして「日本人」とは誰のことなのか。私は日本人にはなれない。そして誰も幻の日本人にはなれない。『心のノート』は言う、「我が国を愛しましょう」と。でも、私は国家を愛することなんかできない。私服で学校に行くことで、多くの先生達の私への評価を裏切った。たくさんの先生をがっかりさせた。私には朴という名前があるけれど、「在日朝鮮人」という枠に入るのは「日本人」という枠に入るのと同じくらい嫌だ。これからも、いろいろな人の私への評価を、裏切って裏切って、かっこいい大人になりたいと思う。
また、福岡の教育基本法改悪に反対する市民の会の八尋さんは次のように述べる。
押しつけられて苦しんでいるのが、例えば今はまだ私ではなくても、誰かの気持ちが押しつぶされるときにはいっしょに反対すること、一つひとつを見過ごさないこと、そういうことから、いつか自分が困ったときは近くにいるだれかがそばにいて手を差し伸べてくれることもあるのだということを、信じることができるようになるのではないかと思っています。
世の中に対する漠然とした不安を、国家にすりよることでごまかすのではなく、大きなもので押しつぶしてしまうのではなくて、私は私のまわりの人たちを信じるために、失われた信頼感を取り戻すために、声をあげつづけていきたいと思います。
大切なのは大切だと言い続けること、その心を守るためにも、私たちは、国家に心を教育されたり採点されたりすること、管理されることを拒否しなければならないと思っています。