中野独人『電車男』(新潮社 2004)を読む。
何とも感想の述べにくい作品である。2チャンネルの掲示板の書き込みを抜粋し、小説風に仕立て上げた一人の男性の恋愛の記録である。あるもてない男性会社員とお嬢様風なの女性の恋愛が話の中心なのだが、その恋愛の展開は間接的にしか語られない。だが、それ以上に、レスという形態でその恋愛を見守るネット上のウォッチャーの焦燥感や感動がリアルに語られる。ウォッチャーたちのアスキーアートを巧みに駆使した記号的な感情表現が羅列する文章を読むことで、いつしか読者もその輪の中に吸い込まれていくのだ。
『電車男』
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