先日読んだ本の中で、内橋氏が批判の的に挙げていた本を敢えて手に取ってみた。
堺屋太一『大変な時代』(講談社 1995)を読む。
しかし、内橋氏の本を読んだ後ではほとんど印象に残るところはなかった。堺屋氏はこれからのグローバリゼーションの進展にあたり、「メガ・コンペティション・エイジ(大競争時代)」がやってくるから、腐敗した官僚制度に頼らず、徹底したローコストな「経営製造流通制度」の確立と消費向上を狙った産業の育成が大切だと述べる。官僚による「護送船団方式」を排除し、自由な競争の土壌を作ることこそが日本を救うといった民主党右派的な論調である。
しかし、それから10年たったが、彼の述べるリストラと価格破壊は日本の経済成長に何らの寄与もしなかった。そして、一定の雇用の確保と育児・介護といった社会保障の充実こそが少子化を食い止め、労働者の勤労意欲を高め、引いては経済成長も促すという当たり前のことが再発見されたのである。