榊原洋一『「多動性障害」児:「落ち着きのない子」は病気か』(講談社+α新書 2000)を読む。
最近日本でも「キレる」子どもの要因として、マスコミに登場する機会の多くなった「多動性障害」であるが、病気なのか、個性なのかという判別が難しく、また治療を巡っても薬物治療、行動療法と医師の見解も大きく分かれている。アインシュタインやエジソンも「多動性障害」であったと言われ、薬物治療には二の足を踏む医師がヨーロッパや日本には多い。しかしアメリカでは中枢刺激剤 リタリンでの薬物治療が一般的で、世界の生産量の9割以上を消費し、「多動性」と診断された小学生の90%以上がリタリンを服用しているそうだ。
この違いには単なる医者の捉え方の差異以上に国民性が大きく反映しているように思う。世界のテロを支援しているとしてブッシュ大統領はイラクや北朝鮮を悪の枢軸国として名指ししたが、具体的な根拠のあることではなく、漠然とした世界の情勢不安に自国の都合の良い明確な答えを示しただけのことである。「多動性」についても同様で、脳という複雑な生物の神秘の世界に対して、神経伝達物質の一つであるドーパミンの生成を調節する「ドーパミントランスポーター」の過剰な働きが原因であると指し示すアメリカ医師会のあり方には、多分に物事をチャート化しようとするアメリカの国民性が感じられる。