読書」カテゴリーアーカイブ

『グーグル・アマゾン化する社会』

森健『グーグル・アマゾン化する社会』(光文社新書 2006)を読む。
先日観た映画『サマーウォーズ』で、10億人がアクセスし、電話やメールをやりとりし、水道や信号などの公共施設の管理システムから衛星のコントロールまでも可能な「仮想空間Oz」というものが登場し、印象に残ったので手に取ってみた。

ITの時間軸からすると少し古い本であるが、Web2.0におけるユーザー参加型の特徴や、グーグルの事業ポリシーに掲げられている「ウェブでも民主主義は機能する」といった内容が、「サマーウォーズ」との関連で頭の片隅に残った。

いかんせん、ここしばらく多忙を極めており、電車での細切れの移動時間に読んだので、あまり内容が頭に入ってこなかった。

『乙女の密告』

第143回芥川賞受賞作、赤染晶子『乙女の密告』(新潮社 2010)を読む。
多少意地になってここ近年の芥川賞受賞作を読んでいる。
京都にある外語大学のドイツ語の暗唱大会を間近にした「乙女」たちの信頼や裏切り、秩序、密告が、第二次大戦中の隠れ家でのアンネ・フランクを取り巻く複雑な人間関係を象徴するという一種冒険的な作品である。
しかし、現実のドタバタコメディドラマのような雰囲気と、ユダヤ人というだけで自己否定を迫られる若い少女の悲痛が、最後までうまく噛み合ないまま終わってしまう。
芥川賞が「荒削りな文章ながら輝きを放つ才能」に贈られる賞であるならば、この作品は納得できる気がする。

『日本人の足を速くする』

為末大『日本人の足を速くする』(新潮新書 2007)を読む。
400mハードルで世界選手権銅メダルを獲得し、先月引退を表明した為末大選手の著書である。「侍ハードラー」の異名の通り、陸上では少しマイナーな競技のアスリートというイメージが強かったが、経歴を見ると、100mでも200mでも日本のトップレベルであり、重心の掛け方や筋肉のつけかたなど大変細かいことまで気を配っており、走りの専門家である。

日本人の筋肉や体型にあった走り方の解説が大変興味深かった。為末氏によると、丹田を意識して「一本の棒」になったつもりで、倒れるようにして走ると記録が伸びるという。

陸上というと元来の運動神経と肉体で勝負するものと思っていたが、風の状態に応じて手の振りを変えたり、足の踏み位置を1cmずつずらしながらコンマ1秒を短くしたり、ものづくりに通じるような努力が求められると、著者は述べる。

彼のホームページを覗くと、オススめの本として、ヴィクトール・E・フランクルの『夜と霧』と、ヨハン・ホイジンガの『ホモ・ルーデンス』の2冊が取り上げられていた。陸上に通ずるものがあるのだろうか。

『夏の約束』

第122回芥川賞受賞作、藤野千夜『夏の約束』(講談社 2000)を読む。
ある一組のゲイのカップルを中心とした日常の人間模様を描く。だが、読み進めながら、一体この作品のどこに文学新人賞に値する文学性があり、審査員はどういった論評をしているのであろうかという疑念が沸いてきた。ただ夏のキャンプの約束をするという展開で、そこには人間としての悩みもなければ差別や葛藤もない。ただ淡々と日常の一断面が描かれるだけである。
逆説的に、都会で生活する20代の若者のやるせなさをテーマとしているのであろうか。

『直言!:日本よ、のびやかなれ』

櫻井よしこ『直言!:日本よ、のびやかなれ』(世界文化社 1996)を読む。
政治、経済、歴史、教育、環境の5つの分野に関する講演会の記録原稿に、大幅な改稿を行ったものである。硬直化した官僚制度や、規制づくめの経済、被虐前提の歴史観、画一化した教育のあり方、理念なき環境破壊に対して、マスコミの報道や「常識」に惑わされず、国民一人ひとりが真摯に考え、答えを導きだすべきだと述べる。

90年代前半に雑誌『文藝春秋』や『諸君!』に散見された、「ダブーを打ち破り、権力に臆せずにものを言う」といった基調でまとめられている。筆者のスタンスが分かりやすい分だけ「安心」して読むことができた。

最後の環境問題の項が興味深かった。最初は海の話から始まり、海が汚染された原因を森の荒廃に求め、最後は国土の森林の半数を占める国有林を管理する林野庁の解体を求めるという展開である。国有林を乱売し、杉林だけにして森の貯水能力や豊かな生態系を破壊してきた森林行政に対する櫻井さんの目は厳しい。放漫な経営を続ける林野庁を第2の国鉄と揶揄し、一日も早く解体し、環境庁(当時)と地方自治体、民間業者による適切な運営に任せるべきだと述べる。