為末大『日本人の足を速くする』(新潮新書 2007)を読む。
400mハードルで世界選手権銅メダルを獲得し、先月引退を表明した為末大選手の著書である。「侍ハードラー」の異名の通り、陸上では少しマイナーな競技のアスリートというイメージが強かったが、経歴を見ると、100mでも200mでも日本のトップレベルであり、重心の掛け方や筋肉のつけかたなど大変細かいことまで気を配っており、走りの専門家である。
日本人の筋肉や体型にあった走り方の解説が大変興味深かった。為末氏によると、丹田を意識して「一本の棒」になったつもりで、倒れるようにして走ると記録が伸びるという。
陸上というと元来の運動神経と肉体で勝負するものと思っていたが、風の状態に応じて手の振りを変えたり、足の踏み位置を1cmずつずらしながらコンマ1秒を短くしたり、ものづくりに通じるような努力が求められると、著者は述べる。
彼のホームページを覗くと、オススめの本として、ヴィクトール・E・フランクルの『夜と霧』と、ヨハン・ホイジンガの『ホモ・ルーデンス』の2冊が取り上げられていた。陸上に通ずるものがあるのだろうか。