櫻井よしこ『直言!:日本よ、のびやかなれ』(世界文化社 1996)を読む。
政治、経済、歴史、教育、環境の5つの分野に関する講演会の記録原稿に、大幅な改稿を行ったものである。硬直化した官僚制度や、規制づくめの経済、被虐前提の歴史観、画一化した教育のあり方、理念なき環境破壊に対して、マスコミの報道や「常識」に惑わされず、国民一人ひとりが真摯に考え、答えを導きだすべきだと述べる。
90年代前半に雑誌『文藝春秋』や『諸君!』に散見された、「ダブーを打ち破り、権力に臆せずにものを言う」といった基調でまとめられている。筆者のスタンスが分かりやすい分だけ「安心」して読むことができた。
最後の環境問題の項が興味深かった。最初は海の話から始まり、海が汚染された原因を森の荒廃に求め、最後は国土の森林の半数を占める国有林を管理する林野庁の解体を求めるという展開である。国有林を乱売し、杉林だけにして森の貯水能力や豊かな生態系を破壊してきた森林行政に対する櫻井さんの目は厳しい。放漫な経営を続ける林野庁を第2の国鉄と揶揄し、一日も早く解体し、環境庁(当時)と地方自治体、民間業者による適切な運営に任せるべきだと述べる。