職場の同僚に薦められて、中野重治『春さきの風』を読んだ。
1928年3月15日の治安維持法に基づく日本共産党一斉検挙の事件を扱った小説である。検挙された夫婦の赤ん坊が留置所で役人から無作法に扱われ、医者の検診もないままに亡くなってしまう話である。職場の同僚がちょうど亡くなった赤ん坊が従兄弟にあたるということで、小説という形をとっているが、ほぼ事実に基づく話とのこと。
当時の共産党員の先行き見えない実態がよく伝わってきた。
「読書」カテゴリーアーカイブ
『佐賀のがばいばあちゃん』
島田洋七『佐賀のがばいばあちゃん』(徳間文庫 2004)を読む。
9月から内山節氏の評論を扱うのだが、内山氏が主張する「グローバル化」に対する「かかわり合う世界」「ローカルな世界」を理解しようと手に取ってみた。
短い作品で、あっという間に読み終えてしまった。佐賀の田舎での祖母との貧乏暮らしがテーマなのだが、昭和30年代の義理人情に厚い日本人の世相が見えてくる内容であった。相手に気遣いをさせない優しさや、ご近所同士の親身な触れ合いなど、現在の日本社会から失われてしまった絆を感じることができた。
『「政治」を生活に生かす』
嶌信彦『「政治」を生活に生かす』(青春出版社 2001)を読む。
本棚に眠っていた10年以上前の本であるが、タイムリーなタイトルだったので手に取ってみた。ジャーナリズムの中立的な視点で、小泉内閣成立直後の構造改革や景気回復、外交、ITについて縦横無尽に語っている。
『新しい中国人:ネットで団結する若者たち』
山谷剛史『新しい中国人:ネットで団結する若者たち』(ソフトバンク新書 2008)を読む。
違法な海賊版が横行する中国のIT業界の模様を伝えながら、後半はそうしたコピーの習慣が報道やネット掲示板にも顔を出し、一つの思想や考え方に流されやすい中国の、特に若者の文化の特徴に言及している。
ここ数日、テレビや新聞で尖閣諸島の中国における報道を目にすることが多く手に取ってみた。35歳以下の都市部に住む若者のとんがった主張がネットに一度書き込まれると、あの広い国土を持つ中国ですら、またたくまに政府にも影響を及ぼすというネット社会の伝播の怖さを感じた。
『天使か女か』
富島健夫『天使か女か』(光文社文庫 1994)を読む。
1988年から1994年にかけて「小説宝石」本誌及び別冊に発表された短編をまとめた作品である。官能小説というのか青春小説というのか、その区分は曖昧だが、性表現を全く厭わない恋愛小説と読むことができなくもない。

