青木雨彦『平家物語の知恵』(講談社文庫 1992)を読む。
1987年に刊行された本の文庫化である。教材研究のために、タイトルだけを見てネットで注文した本である。
中身は『平家物語』のテーマについての紹介という文芸書ではなく、著者のサラリーマン時代の思い出を無理矢理『平家物語』のエピソードに絡めて論じるエッセーである。ちょうど1980年代の後半、会社帰りにビジネスマンが駅のキオスクなどで手にするような内容となっている。
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『少年アリス』
第25回文芸賞受賞作、長野まゆみ『少年アリス』(河出書房新社 1989)を読む。
深夜の学校で二人の少年が鳥の化身に出会ったことで不思議な体験をするファンタジー小説である。描写もソフトタッチで、女性らしい繊細さを感じる作品であった。
『アンチノイズ』
辻仁成『アンチノイズ』(新潮社 1996)を読む。
20代半ばの若者の人生に対する諦めや女性に対する不安や暴力性などが、幹線道路の騒音や楽器のリズム、盗聴の声、鐘の音などによって表現される。
決して活字では表現できない様々な音(ノイズ)が登場人物の心理を表現するモチーフとなっており、元音楽家ならではの勢いのある作品となっていた。
作中、主人公の渋滞している道路の騒音を測定しながら心の中で呟いた台詞が印象に残った。
自然な渋滞とは意味のない怠慢のことだ。そしてそれは今の自分に似ている。何が原因で流れださなくなったのか分からず生きている自分にそっくり。ただ前の奴の尻にくっついていく。苛立ちから抜け出して、思いっきりアクセルを踏み込みたいのに、攣りそうなふくらはぎを我慢して、アクセルとブレーキを交互に神経質に踏みしめるだけなのだ。いったいこの渋滞の先に何があるのか。ぼくを停滞させるものは何か。時々流れの先を見ながら、ぼんやりとした苛立ちを覚えるのだった。
『絶対音感』
第4回21世紀国際ノンフィクション大賞受賞作、最相葉月『絶対音感』(小学館 1998)を読む。
絶対音感とは、鳴っている音の周波数を聞き分けることができ、周波数を等分した音階(ドレミ)で言い当てることができる能力のことである。一度耳にしただけの音を五線譜に書き出してみたり、様々な音が鳴り響いているオーケストラの中である楽器の音の外れを聞き分けたりすることができる。
筆者はそうした能力が歴史的にどう評価されてきたのか、また科学的にどう定義づけられるのかという取材を通して、徐々に音楽とは何か、なぜ音楽で人は感動できるのかといった芸術や心理学にまで踏み込んでいく。上から目線ではなく、読者と一緒に音楽の冒険に出かけていくような雰囲気の作品であった。絶対音感から教育、歴史、芸術、心理学の世界を入っていき、最後は有名なヴァイオリニストの五島節、五島みどりさんの伝記に至るまで、読者を引っ張り続ける文章力は相当のものであった。
『不機嫌な職場』
高橋克特+河合太介+永田稔+渡部幹『不機嫌な職場:なぜ社員同士で協力できないのか』(講談社現代新書 2008)を読む。
雇用が流動化し、契約社員や派遣社員、外国人など様々な人たちが同じ職場で働くようになった結果、タイトルにあるように、職場の雰囲気がギスギスしたものになった、その原因と対策が分かりやすく論じられている。
論者たちは職場の雰囲気が悪くなる原因として、組織のタコツボ化とインフォーマルな情報共有の低下、仕事へのモチベーションの変化の3点を挙げている。そして、そうした問題を乗り越えた企業としてグーグルとサイバーエージェント、ヨリタ歯科クリニックの3社を取り上げている。
興味深いのが、協力し合える組織を作る方法として、昔ながらの昭和の日本の職場慣行を取り上げている点である。
