『絶対音感』

第4回21世紀国際ノンフィクション大賞受賞作、最相葉月『絶対音感』(小学館 1998)を読む。
 絶対音感とは、鳴っている音の周波数を聞き分けることができ、周波数を等分した音階(ドレミ)で言い当てることができる能力のことである。一度耳にしただけの音を五線譜に書き出してみたり、様々な音が鳴り響いているオーケストラの中である楽器の音の外れを聞き分けたりすることができる。
 筆者はそうした能力が歴史的にどう評価されてきたのか、また科学的にどう定義づけられるのかという取材を通して、徐々に音楽とは何か、なぜ音楽で人は感動できるのかといった芸術や心理学にまで踏み込んでいく。上から目線ではなく、読者と一緒に音楽の冒険に出かけていくような雰囲気の作品であった。絶対音感から教育、歴史、芸術、心理学の世界を入っていき、最後は有名なヴァイオリニストの五島節、五島みどりさんの伝記に至るまで、読者を引っ張り続ける文章力は相当のものであった。

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