読書」カテゴリーアーカイブ

『読書進化論』

勝間和代『読書進化論:人はウェブで変わるのか。本はウェブに負けたのか』(小学館101新書 2008)を読む。
テレビや雑誌でも取り上げられることの多い経済評論家の勝間さんの本の選び方に始まり、読書技術、執筆のコツ、出版戦略が紹介される。
時折、著者自身を褒め称える書店員やファンのコメントが挿入され、ビジネスの成功者の自伝のような雰囲気の本である。
妙に内容が頭にスラスラ入ってくるなあと調べたら、一度読み終えていた本であった。
最後に、勝間さんが自分に影響を与えた著者20をリストアップしているのだが、その中で筒井康隆氏の『七瀬ふたたび』を挙げているのが目に留まった。自分と正反対のような人だと思っていたが、もしかしたらセンスが似ているのかもしれない。

『古代ローマ邸宅の壁画』

book

ドナテッラ・マッツォーニ、ウンベルト・パッパラルド『古代ローマ邸宅の壁画』(岩波書店 2006)を観る。
前2世紀から後1世紀頃の、ローマ時代のヴェスヴィオ山周辺地域で見つかった邸宅に残されていた壁画の写真集である。
ローマというと、ギリシャ神話の世界や、色とりどりの花や動物の絵が多いのかと思いきや、柱や屋根、窓などの建築物の絵が多かった。
解説の中でも「壁画が描かれたイメージは、それが装飾している部屋と連続するものとして、読み取られるべきものだ」とあるように、平面的に部屋を飾るものではなく、絵画と室内空間が一体となった立体芸術となっている。

以下、岩波書店のホームページより

p01_r1_c1
現実の列柱の奥に描かれた円柱を伴うヘレニズム神域風景画(ポンペイ,ラビュリントスの家)

p02
ヘレニズム宮殿のファサードを模した見せかけの扉(ポンペイ,ガイウス・ユリウス・ポリュビウスの家)

p03
ギリシア神殿・神域を模した仮想空間(オプロンティス,ポッパエア荘)

p04
君主にふさわしい複雑で豊かな仮想空間(ボスコレアーレ,プブリウス・ファンニウス・シュニストル荘)

p05
権力の称揚のための,描かれたタブロー画「ヘラクレスの神格化」(エルコラーノ,アウグスタレスのコレギウム)

p06
楽園としての仮想庭園(ローマ,リウィアの別荘)

『祭に乾杯』

森井禎紹写真集『祭に乾杯:にっぽん祭紀行』(日本写真企画 2001)を観る。
1月から12月まで日本各地で行われる祭のスナップ写真集である。日本全国82の祭の写真が収められた労作である。
祭というと華やかな浴衣を着てワイワイ楽しむというイメージが強いが、収録されているのは、「男の男による男のための」硬派は祭の風景ばかりであった。はだか祭やどろんこ祭、信州御柱祭、岸和田だんじり祭など、非日常な世界に熱くなる男のパワーが溢れていた。

スクリーンショット 2014-11-19 21.13.49 〈森井禎紹のホームページ |日本の祭り〉

『戸隠伝説殺人事件』

内田康夫『戸隠伝説殺人事件』(徳間文庫 1992)を読む。
1983年に角川書店より刊行された本の文庫化である。昨日今日と少し時間があったので、3時間近くで一気に読んでしまった。
2、3年前に長野市から白馬に抜けていく途中で、作品の舞台となった戸隠や鬼無里という地名の看板を見ていたので、妙な現実感を感じながらページを繰っていった。
強圧な憲兵が幅を利かせていた戦前から、戦後の混乱、そして観光地開発が喧しい1980年代へと時代がどんどんと移り変わっていく中で、40年も前の怨恨をずっと心に持ち続けていた巫女が、戸隠に古くから伝わる「鬼女紅葉」伝説に乗っかって続殺人事件を起こすという、時間の流れのアンバランスな設定が読者をどんどんと引きつけていく。殺人事件に絡んで、政治屋や警察行政の皮肉も交えられており、内田作品の中でも一番読み応えのある内容であった。
久しぶりに満足感の残る読書体験であった。ネットやテレビも良いけど、やっぱり小説の物語世界にハマった時のトランス状態に勝るものはないね。

『運河』

unnga

熊切圭介写真集『運河』(平凡社 2011)を観る。
墨田区や江東区、中央区、大田区、品川区、港区の6つの区を中心とした川や運河のモノクロ写真集である。
東京都心において、川や運河は、目の前にありながら視界に入らない、忘れ去られた存在である。工場からの汚れた排水が流れ込み、およそ自然とは対極に位置する人工物である。しかし、そうした宅地や道路、線路の隙間を埋める日陰な役割を担う運河であるが、そのほとりでは、子どもたちがDSに興じていたり、おじさんが釣りをしていたり、住民の生活の中にしっかりと入っている。また、江戸時代の運搬の基盤は運河であり、現在でも高速道路の橋架の下で船を動かす人たちもいる。
日本橋や神田川など東京都心の風景でありながら、周縁から中心を覗いたような「違和感」が残る作品であった。