熊切圭介写真集『運河』(平凡社 2011)を観る。
墨田区や江東区、中央区、大田区、品川区、港区の6つの区を中心とした川や運河のモノクロ写真集である。
東京都心において、川や運河は、目の前にありながら視界に入らない、忘れ去られた存在である。工場からの汚れた排水が流れ込み、およそ自然とは対極に位置する人工物である。しかし、そうした宅地や道路、線路の隙間を埋める日陰な役割を担う運河であるが、そのほとりでは、子どもたちがDSに興じていたり、おじさんが釣りをしていたり、住民の生活の中にしっかりと入っている。また、江戸時代の運搬の基盤は運河であり、現在でも高速道路の橋架の下で船を動かす人たちもいる。
日本橋や神田川など東京都心の風景でありながら、周縁から中心を覗いたような「違和感」が残る作品であった。
『運河』
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