松本典久『ぐるり一周34.5キロ JR山手線の謎』(実業之日本社 2009)を読む。
山手線の車両の移り変わりや環状運転となった経緯、全29駅の乗降客数や開業した背景などがコンパクトにまとめられている。
池袋から赤羽まで沿線された歴史や、新橋駅の変遷、常磐線の起点が田端駅から上野駅に変わった理由など、鉄道オタクでなくとも通勤や通学の車窓からの風景が楽しくなる雑学ばかりであった。
タイムリーなことに、今日の夕刊は山手線の新型車両の記事であった。大正時代の木製の車両ホデ6100系から始まる山手線の「進化」に思いを馳せてみたい。
「読書」カテゴリーアーカイブ
『モンゴルを行く』
鈴木喬『モンゴルを行く』(東洋出版 1999)を読む。
JICAの国際協力専門員として、モンゴルのダルハンにある国営製鉄所でコンサルタント業務に携わった著者の2年間にわたるモンゴル滞在記である。
還暦を過ぎた「おじさん」の生活の視点を通して、近くて遠い国モンゴルの食事や風習、自然について語られる。
停電や電話の不通が日常的に発生し、行政の整備が遅れ、交通網の不備が指摘されるなど、1992年に民主化され、重工業に力を入れ始めた1990年代後半のモンゴルの変化ぶりが垣間見える。
首都のウランバートル辺りは大きく事情も変わっているであろうが、田舎の方は現在でも半遊牧半定住の生活を送っているのかもしれない。
『燃える秋』
五木寛之『燃える秋』(角川書店 1978)を読む。
おそらく高校時代に一度は読んだのであろうが、ほとんど記憶に残っていなかった。20代後半の男女のすれ違いなど、当時は興味もなかったのであろう。
いつものように、帝国書院の地図帳片手にイランの都市や山脈の位置関係を頭にいれながら、旅行気分を味わうことができた。
テヘランが標高1000メートルを超える高地にある首都だというのは初めて知った。乾燥と寒気の両方があるからペルシャ絨毯が生まれたのであろうか。
主人公の亜希はただペルシャ絨毯を見るという目的だけで会社を辞め、恋人と別れ、そして北京からテヘランに向かう飛行機の中で、ため息交じりに次のように考える。
機密窓の外の濃紺な空と、強い光を放つ星の隊列を彼女はみつめた。いま、この翼の下に無限の時間と人間たちの営みを呑み込んだ暗黒の大陸がある。そこにあるのは黄土の大陸と流砂の荒野、そして底知れぬ峡谷と削ぎ立った山塊だ。何年も何年もかけてその気の遠くなるような業苦の道を越えた隊商の人々。専制君主たちに駆り出され、流砂のような長征の果てに消えた男たち。かつてザイデン・シュトラーセンという美しい名で呼ばれた地獄のような歴史の道をラクダの背で運ばれた様々な品物。あの祗園祭の宵山の夜、山鉾に飾られたペルシャ絨毯もまたそこを通ってたどりついたのだ。
そんな亜希の様子を見ていた隣席の男性は次のような言葉をかける。
「天山山脈、崑崙山脈、ヒマラヤ、タクラマカン砂漠、インダス河、チンギス・カンのモンゴル大帝国、そしてアレクサンダー大王の遠征、スタインやヘディンの探検、絹やガラスや、楽器や仏典の伝来−−。つまり人間の歴史の中でもっとも壮大なドラマが、この私たちがいま飛んでいる空の下でくりひろげられたわけですね。そこを私たちは眠ったまま、または食事を楽しみながら、八時間で飛ぶ。なにか許されないことをしているような、そんなそらおそろしい気持がしませんか。私は何度ここを飛んでも、その度にぞっとするような感じにおそわれるんですがね」
この男性のセリフが妙に印象に残った。人々が営営として築いてきたヨーロッパ文化とアジア文化を結ぶシルクロードの上空を、飛行機はただ目的地に向かって飛んでいく。現在では航空機だけでなく、インターネットもそうした文脈を無視した一員になるのであろう。航空機やインターネットでは分からない、亜希や男性のセリフの背景にある「距離感」というものを大切にしていきたい。
眠気で頭が働いていないせいか、いつも以上にあっちもこっちも文章がおかしくなってしまった。。。
さあ、寝よう。
『異端の系譜』
中西茂『異端の系譜:慶応義塾大学湘南藤沢キャンパス』(中公新書ラクレ 2010)を読む。
1990年に神奈川県藤沢市遠藤に開学し、総合政策学部と環境情報学部の2学部を擁する慶応義塾大学湘南藤沢キャンパスの20年の歴史と展望がまとめられている。
三田や日吉とは異なる微妙な立ち位置について触れながらも、慶応大学のポリシーともなっている「半学半教」を地でいく学習スタイルや、教職員の創意工夫、卒業生のバイタリティーなど、SFCの魅力をこれでもかとアピールする内容となっている。
既存の大学や学部に飽き足らない開設当初の教員や、キャンパス内の空き地で農園を作った学生、NPO法人や起業にどんどんチャレンジしていく卒業生など、タイトル通り「異端」な大学の人脈の「系譜」が紹介されている。インターネット研究の第一人者である村井純氏や、初代総合政策学部長となった加藤寛氏、『NPO法人カタリバ」を立ち上げた今村久美さんの活躍の様子やコメントを読んでいると、改めて大学という場の可能性について考えてしまう。
通信教育も終わってしまったので、次は何を学ぼうかと考えていたところだったので、数年後に想いを馳せながら読むことができた。
『斎王の葬列』

内田康夫『斎王の葬列』(角川書店 1993)を読む。
奈良時代から南北朝時代まで続いた天皇に代わって伊勢神宮へ仕える斎王のならわしをモチーフにした推理小説である。
1993年に刊行された本で、ゴジラ松井の活躍や皇太子のご成婚パレードなど、今読むと時代を感じる作品ともなっている。
いつも通りの強引な展開であるが、国道1号線沿いにある滋賀県の土山町を舞台にしており、数年前にミラージュで走り抜けた記憶と合わせて楽しむことができた。

