読書」カテゴリーアーカイブ

『黒板アート甲子園作品集』

日学株式会社総監修『黒板アート甲子園作品集:高校生たちの消えない想い』(日東書院 2018)を眺める。

2018年時点で4回目を迎える黒板をキャンバスにした作品が250点以上も掲載されている。筆やねりけしを用いたテクニックなども紹介され、これから作品を制作する生徒にとっても分かりやすいものになっている。濃緑色の背景に教室内に固定された黒板という制約を上手く生かした作品が目を引く。

『日本の最も美しい図書館』

立野井一恵『日本の最も美しい図書館』(エクスナレッジ 2015)を読む。
アーチ曲線を大胆に用いた多摩美術大学図書館や、ギリシャ神殿のような大阪府立中之島図書館、斬新な丸窓の金沢海みらい図書館など、日本各地の40余りの図書館の外観や内観の写真が掲載されている。どの図書館も「無駄」なスペースや吹き抜けの空間が取られており、すこし歪で多様な人間性を反映したようなデザインとなっている。

『写真で見る環境問題』

長谷川三雄『写真で見る環境問題』(成文堂 2001)を読む。
著者は国士舘大学政経学部の教授で、学会の紀要で発表された内容を取りまとめたような体裁で、ドイツやオーストリア、ベルギー、八丈島、三富新田、足尾銅山など、ヨーロッパと日本の各地で進む環境行政の現在を追う。

『エネルギー論争の盲点』

石井彰『エネルギー論争の盲点:天然ガスと分散化が日本を救う』(NHK出版新書 2011)を読む。
原子力発電の危険性やコスト高について明確に批判する一方、太陽光や風力発電以外を認めようとしない環境派の意見に対しては、現状を見ていない机上の空論だと断じる。その上で、今後の日本のエネルギー政策について、石炭火力発電や原子力発電のウェイトを下げ、天然ガスを中心に再生可能エネルギーを組み合わせた、コストと環境負荷を両天秤にかけた形を提案する

確かに天然ガスも地球温暖化の主因である化石燃料の一つである。しかし、天然ガス発電は、ガスタービンからの排気でもう一度発電を繰り返すコンバインドサイクルの技術が標準化されており、従来型の石炭発電に比べ1.5倍も発電効率が良い。つまり、CO2の排出量は3文の2に削減される。また、天然ガスは原油に比べ、世界各地に点在しており、今後400年ほどの埋蔵量が確認されている。

著者は、鄧小平の「白いネコでも黒いネコでもネズミを取ってくるのがいいネコだ」という言葉を引用し、原子力と再生可能エネルギーの論争を越えて、現状より環境によく、コストや安全性も考慮した妥協案を主張する。

最後に著者は次のような例え話で締めくくる。

天然ガスを野球にたとえれば、ホームランは少ないが、三振や凡退も少ない出塁率の高い二番、三番バッターのようなものである。3・11後の現在の日本のエネルギー状況で求められているのは、試合に着実に勝つことであって、子どものファンを喜ばすために、大ぶり三振や走者封殺のリスクを冒してホームランを狙うことではない。現状は、かつて四番を打っていた高級取りの石油に疲れが見え、力任せの大ぶりスイングで、監督の覚えめでたく四番と目されていた原子力が、力みすぎの大ファウルで観客に怪我をさせ、自らも大怪我してしまったようなものである。そうである以上、試合に勝つためには、これまで二番、三番を打っていた天然ガスが四番に変わり、長打が打てずに調子の波が大きいので八番、九番だった風力発電・太陽光発電などを、一番、二番に繰り上げていくしかない。三番、五番は、疲れと怪我で衰えたとはいえ、未だ侮れない長距離ヒッターの石油と原子力が打つしかないだろう。

『猫島』

ねこみゅ!編『猫島:14人の住民と200匹の猫島-愛媛・青島』(フールズメイト 2014)を見る。
愛媛県大洲市の沖合14kmに浮かぶ周囲わずか4kmの小さな島に暮らす猫の写真集である。かわいい猫ちゃんたちがこれでもかというくらいに登場する。若い女性であれば、「きゃー」と歓声を上げていたことだろう。

あとがきの中で、編集者は猫島の抱える問題点についても指摘している。猫島を尋ねる人は悪い人ではないが、猫カフェに行くような気楽な気持で訪れる。しかし、青島は住民14人のみで観光地ではなく生活の島である。宿泊施設も売店もない。大量の人が訪れるだけで、住民の生活が妨げられてしまう。決して観光地ではないが、観光公害という言葉が想起される。