読書」カテゴリーアーカイブ

『そこからすべては始まるのだから』

香山リカ『そこからすべては始まるのだから:大震災を経て、いま』(メディアファクトリー 2011)を読む。
些細な人間関係での悩みや、尽きない物欲、他人と比べての自分に対する不安などが、震災を機に露わになり、そこからの変化を素直に受け入れようと述べる。内容自体は分かりやすかったのだが、何かの新聞か雑誌に書いたものを採り集めたのだろうか、同じような話が繰り返され、後半は飽きてしまった。

『テレビに映る中国の97%は嘘である』

小林史憲『テレビに映る中国の97%は嘘である』(講談社+α新書 2014)を読む。
著者はテレビ東京の報道局の特派員で、4年半の中国取材の中で21回も当局に拘束された経験を持つ。その著者が体当たりで取材した、「反日デモ」の実態や中国一の金持ち村と言われた華西村、賄賂に使われる茅台酒(マオタイ)、青海省のチベット族の暮らし、毒餃子の犯人が生まれた村、中朝国境付近の様子の6章立てで構成されている。どの話も実際の現場の雰囲気が伝わってきて面白かった。やはり海外事情に関する本は、その国の全体を表している訳ではなく、個人の主観に左右されてしまうが、実際の取材や体験を元にした内容の方が良い。

特に、社会主義の中国の方が、農業の企業化が進み、大規模農業で社員として働く制度が出来ているという話が興味深かった。日本よりも資本主義的なやり方が導入されている。また、以下の戸籍に関する話では、江戸時代の「帰農令」や映画『翔んで埼玉』を思い出させる。

中国には厳格な戸籍制度がある。市や村単位で細かく分類され、基本的には、自分が生まれた自治体でしか、行政サービスを受けられない。出稼ぎ先に長く住んでも、そこでの公共サービスや社会保障は与えられないのだ。しかも、親の戸籍によって子供の戸籍も決まってしまう。
特に悪名高いのが、「都市戸籍」と「農村戸籍」の分類である。都市戸籍のほうが、社会福祉や公共サービス、就職などで圧倒的に有利なのだ。ちなみに、日本への観光ビザの取得においても、戸籍は可否を決める大きな要因である。北京市や上海市など、大都市の戸籍であれば、信用されて条件が甘くなるが、農村戸籍だと、保証人や財産証明などの審査が厳しくなる。

『世界で一番ふしぎな地図帳』

おもしろ地理学者『世界で一番ふしぎな地図帳』(青春出版社 2006)を読む。
教材研究の一環だったが、雑談の小ネタが手に入った。書き留めておきたい。

  • 黒潮の幅は日本近海では100キロにも達し、その速さは時速に換算すると4〜6キロ、最大で7キロになる。概算で、1秒間に2000万〜5000万立方メートルの水を選んでいるとされる。一方アマゾン川河口流域の流量は、毎秒25万立方メートル前後。じつに、黒潮は、アマゾン川の80〜200倍もの水を運んでいるというわけである。じっさい、黒潮は、世界でも有数の暖流で、アメリカ東岸を北上するメキシコ湾流と並ぶ世界二大海流といわれる。
  • 東京に降る雪は、月別でいえば、2月がもっとも多い。というより、東京にかぎらず、関東地方から東海にかけての太平洋側では、2月にもっとも雪が降りやすい。(中略)順を追って説明すると、冬、大陸から張り出す寒気(シベリア高気圧)が強いと、南海上で発生した低気圧は、その高気圧に邪魔され、日本へ近づくことができない。そのため、低気圧ははるか南の沖合いを通過していく。ところが、2月になって大陸からの寒気が弱まると、低気圧は北上し、太平洋岸の近くまで接近してくる。すると、この低気圧に向かって、三陸沖から冷たい空気が流れこみ、雪が降りやすくなるというわけである。ちなみに、季節に関係なく、上空の雲から落ちてくるのは、ほとんどが雪(氷)である。そして、地上付近の気温が高ければ、雪は途中で溶けて雨になるが、地上の気温が2℃以下の時には、溶けずに雪のままで落ちてくる。太平洋岸に、三陸沖から冷たい空気が流れこんでいるときには、地上の気温が下がっているので、雪のまま地上に到着するというわけである。
  • なぜ、東京にこれほど坂道が多いのだろうか? その理由は、もとをたどれば、富士山のせいだったといえる。
    富士山の噴火は、約8万年前から始まったと考えられているが、以降、何度も噴火を繰り返し、大量の火山灰を降らせてきた。その火山灰が、編成風に乗って東へ運ばれ、現在の東京都内に、隅田区や江東区といった下町を除き、だいたい5〜8メートルの高さまで降り積もった。この火山灰によって、東京は凹凸の激しい地形となり、坂道がたくさんできたのである。

『池上彰の宗教がわかれば世界が見える』

池上彰『池上彰の宗教がわかれば世界が見える』(文春新書 2011)を読む。
教材研究で手っ取り早く三大宗教の特徴について整理したいと思い手に取ってみた。どうも最近精神的に疲れているので、話のネタに使いたいと思った点だけ抜き書きしておきたい。

  • 中国では共産党公認のキリスト教と、共産党が認めない「地下教会」のローマ法王公認のカトリックの2つのキリスト教がある。
    カトリックにおいては、キリストの弟子のトップであるローマ法王が、一番偉いとされており、地上の最高位です。ということは、カトリックを信じる人にとって、ローマ法王は共産党より上の存在になってしまいます。それを認めることは、共産党に忠誠を誓わない組織の存在を認めることになってしまいます。ですから中国ではカトリックが弾圧されているのです。むろんバチカン市国と中国とは国交を結んでいません。
  • アメリカには、進化論を信じない人が大勢います。聖書と矛盾しているからです。進化論は、人類について、440万年前に猿人が現れ、50万年前に原人、3万年前に新人と進化してきたと説いています。しかし聖書を信じる人は、そんなことはありえないと考えます。聖書には、神様が自らの姿に似せて人間をおつくりになったと書いてあるからです。そのように聖書に書かれていることがすべて真実だと信じている人たちのことを、「キリスト教原理主義者」という言い方をすることがあります。
    キリスト教原理主義者やそこまで排他的ではない聖書信仰の団体までを含めて、福音派、エヴァンジェリカルと言います。アメリカの保守層をなす人々で、その多くが共和党の支持者です。神様が「産めよ、増やせよ」と命じたので、「同性婚」と「妊娠中絶」には反対で、共和党もその考えを公約に取り入れなくてはなりません。
  • カーストは非常に厳密です。例えば日系の企業が現地でオフィスを掃除する人を雇おうとしたなら、テーブルを上を拭く人と、床を拭く人とは、カーストが違います。一人の人に「部屋を掃除していてね」と簡単に言うわけにはいかないのです。それぞれに人を雇わないといけない。
  • 最後の晩餐の席で、イエスは仔羊の代わりに自分自身へを神への生贄に見立て、パンをちぎって「これは私の肉である」、ブドウ酒の杯を回して「これは私の血である」と言う。キリスト教会はいまでもパンとブドウ酒を十字架のイエスの肉と血に見立て、ミサという儀礼を行っています。
  • 現在のローマ教皇はアルゼンチンの首都ブエノスアイレス出身のフランシスコで、初代ローマ教皇ペテロから数えて266代目になる。
  • 日本でもイスラム教への入信者や改宗者は増えていくだろう。その理由の一つは、イスラム教はいわば「マニュアル型宗教」で、分かりやすいということです。キリスト教は本当に解ろうとすると解りにくい宗教です。例えば父と子と精霊の一体性というのは非常に理解しにくい。イスラム教の場合は、そういう難しさはない。神は一つであって、ムハンマドはただの人間であって、神の命令を我々は保存している。それに従って生きていけばいい。