読書」カテゴリーアーカイブ

『電車の中で化粧する女たち』

米澤泉『電車の中で化粧する女たち』(ベスト新書 2006)を読む。
化粧というとキレイになってモテたいという極めて社会的な行動だと思いがちだが、著者によると、コスメフリークは素顔ではなく化粧を施した顔という虚構の世界に憧れる「オタク」である。異常なまでに整形を繰り返し、身体をサイボーグ化していくのは「人形としての私になりたい」そして「私というキャラクターに萌えたい」という願望に基づいていると分析する。
タイトルはキャッチーだが、あまり面白い内容ではなかった。

『粘土でにゃにゅにょ』

田中敬三『粘土でにゃにゅにょ:土が命のかたまりになった!』(岩波ジュニア新書 2008)を読む。
滋賀県にある重症心身障害者通所施設で、粘土を活用した作業療法に取り組む著者の実践報告である。こねくり回しても、穴を開けても、投げつけようが、顔に塗りたくろうが、時には食べてしまっても平気な粘土の持つ可能性に言及している。

『菊次郎とさき』

ビートたけし『菊次郎とさき』(新潮社 1999)を読む。
著者の父であるペンキ屋の菊次郎と教育熱心な母さきについてのエッセーである。足立区の梅島で育った世界の北野武の生い立ちが丁寧に語られる。「この物語はすべてフィクションであり、実在の人物には一切、関係ありません」との断り書きがあるが、実際はどうなのだろうか。

『女の絶望』

伊藤比呂美『女の絶望』(光文社 2008)を読む。
「小説宝石」に1年にわたって連載されたコラムである。
ずばり、不倫やセックス、マスターベーションといった単語が羅列され、女の生き方や処世訓が有り体に語られる。女にとってリストカットもセックスも自分の存在を確かめるイタ気持ちいいものという考えは興味深かった。また女性は幾つになっても恋愛至上主義で、愛されている実感が自分のアイデンティティを支えるといった著者の物言いに、なるほどと肯くところが多かった。

『掏摸』

第4回大江健三郎賞受賞作、中村文則『掏摸』(河出書房新社 2009)を読む。
掏摸(すり)という珍しい題材は興味を引いたが、あまり面白くなかった。