江戸川乱歩『塔上の奇術師』(ポプラ社 1964)を半分ほど読む。
さすがに飽きた。変装や屋根への逃亡、家丸ごとの改造など、他作品と全く同じパターンの使い回しである。子どもの頃にはスイミングスクールの入り口でワクワクしながら読んでいた記憶があるが、大人が読んで楽しめるものではない。江戸川乱歩作品には昭和の闇が描かれていると、大学のゼミの先生が話していたのを記憶しているが、少なくとも怪人二十面相シリーズには描かれていないと思う。
「読書」カテゴリーアーカイブ
『レンズの向こうに自分が見える』
野村訓『レンズの向こうに自分が見える』(岩波ジュニア新書 2004)をパラパラと読む。
刊行時、大阪府立大手前高校定時制の教諭だった著者が、顧問を務めていた写真部の生徒が写真を撮ることを通して、自分と見つめ合い、そして成長していくプロセスを語る。
たった一言で、それまでトラウマを抱えて生きてきた生徒が目を輝かせる奇跡が描かれるのだが、教育現場に身を置くものとしては、美談調で学校ドラマ仕立てなのが気になった。実際の学校教育は徒労の積み重ねである。カメラを通して、部活動を通して生徒を支えていくことに異論がある訳ではない。一冊の本になった時に、あまりに切り捨てられているところが多すぎる。
『サイクルスポーツ攻略法』
『ご近所のムシがおもしろい!』
谷本雄治『ご近所のムシがおもしろい!』(岩波ジュニア新書 2012)をパラパラと読む。
ミミズの糞の有効な活用法やタニシの実態などがよくわかった。取り上げられているムシは、ザリガニ、タニシ、カブトエビ、カエル、トンボ、イモリ、カメ、サンショウウオ、アメンボ、ゲンゴロウ、ミミズ、カタツムリ、カマキリ、カメムシ、コオロギ、セミ、ヘビ、アゲハチョウ、クモ、アブラムシ、カブトムシ・クワガタ、蛾、ゴキブリ、ナナフシ、ゴミムシ、ダンゴムシ、ヤモリ、テントウムシ、ツマグロヒョウモン、カナヘビの30匹である。どれも専門家ではなく経験談で語られているので面白かった。
『顔がたり』
石井政之『顔がたり:ユニークフェイスな人びとに流れる時間』(まどか出版 2004)を卒読する。
著者自身が、顔の右半分に大きな赤いアザを抱える血管腫の患者である。血管腫は新生児の1000人中約3人の割合で生まれるといわれ、1億2000万人の日本人の中で、約36万人が顔や体のどこかにアザを持っている計算である。
身体的な機能にほとんど問題がないため、障害者という括りからは外れる。しかし、著者はいじめや社会的差別の対象となっている事実から目を背けていない。また、教育や仕事以上に、恋愛の場面で大きな心理的ハンデとなっている現実にも触れている。根本的な治療法がなく、障害でも病気でもないので、当事者とその家族だけで苦しみを抱え続ける人が多い。
著者は現在、「ユニークフェイス研究所」を立ち上げ、全国の顔や身体にトラウマを抱えている人たちとの交流会を開催している。見た目以上に繊細な問題であり、著者の活動が広がることを祈念したい。

