地理」カテゴリーアーカイブ

「米国務長官『台湾の国際機関参加支持を』」

本日の東京新聞朝刊に、ブリンケン米国務長官が台湾を独立国と見做し、国連機関などへの参加を支持するように呼びかける声明を発表したとの記事が掲載されていた。中国は台湾を中国の不可分領土の一部だとし、台湾の独立を支持することは内政干渉であるとの立場を崩していない。

日本も第二次大戦後、台湾の方を孫文以来の正当な中華民国だと認めてきた。しかし、1972年に日中国交正常化を果たす際に、台湾こそ中国の一部であるとし、国交を閉じきてきた。現在も日台の間には国交がなく、台湾には日本大使館がなく、日本にも台湾の大使館はない。日本大使館の代わりを台北駐日経済文化代表処が、台湾大使館の代わりを日本台湾交流協会が担っている。

中国と距離的に近く、経済的にも密接な日本や韓国、東南アジア諸国はどう受け止めるであろうか。台湾承認が国際社会の踏み絵となるのは如何なものだろうか。

「スーダン 軍クーデターに怒りのデモ」

本日の東京新聞朝刊に、ここしばらく揺れていたスーダン情勢がまとめられていた。
スーダンは世界史でいうと、1898年にイギリス、フランス両勢力が衝突したファショダ事件が起きた国である。その後、イギリスが第二次世界大戦後まで支配し、1956年に軍事政権が独立国家を建設した。以後、何度も軍事クーデターが繰り返されている。輸出の大半は原油であったが、南スーダンが分離独立後、原油の生産は大幅に落ち込んでいる。2019年の一人当たりGNIは590ドルに過ぎず、同年の経済成長率は-2.5%、物価上昇率は52.37%、失業率は13.3%にのぼる。民主化しても経済再建の道のりは厳しいであろう。

記事には書かれていないが、スーダンは貿易面で中国べったりであり、スーダンの軍事政権を中国が軍事支援している。経済を一手に掌握する軍事政権の方が、貿易相手としては好都合なのであろう。政治問題かと思いきや、中国の一帯一路経済圏構想の拡充に伴う、市場の制圧と捉えた方が理解が早いだろう。

 

「トルコ大統領 欧米など10大使追放指示」

本日の東京新聞朝刊に、何かと騒がしいトルコのエルドアン大統領に関する記事が掲載されていた。トルコは対ロシアとの地政学上、英米仏を中心とするNATO(北大西洋条約機構)に参加してきた。トルコとロシアはクリミア戦争以降ずっと不仲が続いている。また、米国にとってもトルコに米軍基地(インジルリク空軍基地)を堂々と展開することができ、中東に睨みを効かせることができる。

2003年にエルドアン氏がトルコ首相に就任した頃は、イスラム教国のトルコがキリスト教をベースにした欧州連合(EU)へ加盟する話も実現間近だと思われていた。しかし、2014年に大統領に就任して以降は、首相職を廃止して権力を集中し、報道への規制も強化している。今年の8月にはアフガニスタン難民の受け入れをめぐってEUとの対立が激化している。既にトルコ国内には数十万人のアフガニスタン難民が流入しているとされ、国内各地で難民と住民との衝突が生じている。

エルドアン大統領の心中を察するに、民主主義を標榜するNATO陣営やEUが、トルコに移民・難民を巡る問題を押し付けていると感じているのであろう。一方、トルコがNATOを脱退したからといって、すぐさまロシアや中国に与するとも思えない。ではエルドアン大統領はどこへ向かおうとしているのか。誰か説明してくれ!

「G7、強制労働排除で一致」

本日の東京新聞朝刊に、中国の新疆ウイグル自治区での綿花畑や綿製品工場での強制労働を巡って、先進7カ国が貿易で圧力をかけていくことで一致したとの記事が掲載されていた。

地理の先生っぽい話をすると、綿花は乾燥地帯で雨季と乾季がはっきりしている地域で栽培されている。一年中雨が降る日本ではほとんど栽培されていない。内陸地域ほど降水量が少なく、気温の年較差も大きいため、雨季と乾季が明瞭になる。生産量世界第1位はインドである。内陸のデカン高原は年降水量は800ミリメートル以下で、夙に綿花の一大産地として知られる。
中国の内陸に位置する新疆ウイグル自治区は年間降雨は100~500ミリで、中国の綿花栽培の9割を占めている。

閑話休題。米国バイデン大統領は、看板政策の人権を錦の御旗に、トランプ前大統領の外交政策をそのまま継承している。トランプ前大統領はツイッターで、米国の知的財産が中国にだだ漏れであると指摘していたが、バイデン大統領になって、その批判の材料が知的財産権から人権に変わっただけである。

それにしても、中国のイスラム教徒への弾圧は目に余るところがある。ウイグル語の使用禁止やイスラム教の否定、北京標準時の使用など、およそ民主主義国とは言い難い、常軌を逸した政策が報じられている。バイデン大統領も習近平国家主席も同じ穴の狢(むじな)という気がする。

「中国 対印領土問題に布石」

本日の東京新聞朝刊に、ブータン西部の中印国境未確定地域に中国が乗り出すとの記事が掲載されていた。地図帳で確認すると、チベット自治区とミャンマー、インド、ブータンに囲まれた山地である。こうした中国の領土拡大は、中国習近平政権が進める「一帯一路経済圏」戦略の一環である。今後の市場拡大が見込まれるアフリカとの貿易体制を確保するため、中国はインド洋へのアクセスを強化している。ミャンマーやアフガニスタンへの介入と同様に、中国のインドへの圧力という視点で捉えておきたい。