地理」カテゴリーアーカイブ

「パキスタンが印大使追放へ」

本日の東京新聞夕刊から
今日で5日間の夏期講習が終了しました。講習の中で,ヒンドゥー教国のインドとイスラム教国のパキスタンとの間で国境が画定されていないカシミール地方について触れました。このカシミール地方は,インドとパキスタンが分割して以来70年以上も紛争の原因となっています。

今回の講習を履修した者は,このカシミール地方が新期造山帯に位置することは分かると思います。新期造山帯は今現在造陸活動が盛んなところで,火山と地震が頻発し温泉が見られます。また,地球内部の物質が外に出てくるところなので貴金属やレアメタル、レアアース、宝石類が多く産出することで知られます。メキシコの銀やチリの銅と同じです。このカシミール地方にも金や銀,銅などの鉱物資源に加え,推定40トン以上のルビーが地下に眠っているとのこと。

新期造山帯は巨大な力と熱を受け、世界の主要な油田や天然ガス田が集中しています。新期造山帯を含む国々は,紛争に巻き込まれ,政治的に安定しないところが多いというのも,なんか悲しい現実です。みなさんは新期造山帯周辺の国の政治・経済を見て,どう感じますか?

「ロ首相,4年ぶり択捉島」

本日の東京新聞朝刊に,ロシアの首相が択捉島を訪問したとの記事が掲載されていた。
地図帳は世界の趨勢に合わせて,毎年(毎月?)更新されている。しかし,小学校,中学校,高校では文科省がきちんと検定した地図帳しか使用することができない。その大きな理由は,国境と台湾問題を含めた東アジア情勢である。現在日本政府は,北方四島,竹島,尖閣諸島を含めて日本の領土としており,そうした領土がきちんと画定されていない地図帳は文科省の検定をクリアーすることはできない。

また,日本は1972年日中国交正常化の際に,中華人民共和国政府を「中国の唯一の合法政府」とし,台湾は中国の一部という見解を承認したので,台湾が完全な独立国であるという表記は認めていない。しかし,台湾は米国と軍事同盟を結んでおり,冷戦時代には日本と同じく西側諸国の一つであった。日本と台湾は正式な外交関係はないものの,民間団体が中心となって経済的には不即不離の関係となっている。そのため,台湾をクローズアップすることはしないものの,独立国に似た表記をすることとなっている。地理Aの教科書にも地理Bの教科書にも台湾だけの章立ては存在しない。しかし,「アジアNIES」や中国の経済特区などの経済面では取り上げられる微妙な記載となっているのは,日本政府の微妙な見解が反映されているからだ。

さて,北方四島である。択捉島,国後島を含めて北方四島は,歴史的に日本の固有の領土であることは間違いない。しかし,日本はロシアに原油や天然ガスなどの資源を頼っているため,強く言い出すことができない。またロシアの方も日本のエネルギー状況を強気の外交姿勢を崩していない。いま日露外交の話題にのぼっている北方四島を経由する天然ガスのパイプなど作ってしまったら,択捉島や国後島は永久に返ってこないであろう。地理選択者は日本のエネルギー政策という観点から,領土問題を展望してほしい。

「ウイグル自治区巡り二分」

本日の東京新聞朝刊より。
中国というと,世界一人口の多い漢民族の国だとステレオタイプに捉えてしまいがちである。しかし,中国は国内に少数民族の自治区を多数抱えており,多民族国家という側面がある。但し,中国の沿岸部に居住する漢民族が人口の9割近くを占めており,共産党支配の政治や経済も漢民族が中心であり,チベットやウイグル自治区に対する弾圧や民族「浄化」に対する批判が繰り返されている。1学期の地理Aの授業でも少し触れたところである。

こうした中国政府を支持する国と批判する国に色分けし分析を加えたのが,今日の記事の内容である。「敵の敵は味方」という政治の根本原理が手に取るように分かる。中国を支持するのは,米国の敵であるベネズエラやボリビア,キューバ,また,インドの敵であるパキスタン,イスラエルの敵であるシリア,サウジ,エジプトなどが名を連ねる。また,治安の悪化が懸念されているアフリカのスーダンや,南スーダン,ソマリアといった国々が中国支持に回っているというのも恐ろしい話である。

地図をよく見ると,コンゴ民主共和国やミャンマー,ジンバブエ,ベラルーシのように,国内の少数民族や反政府組織に対する強圧政治を敷く国が中国政府に靡(なび)くという動きは,これからの国際政治を眺める一つの視座になるだろう。今後とも中国の政治経済に左右される世界情勢には注意を払う必要がある。

「イラン,英タンカー拿捕」

本日の東京新聞夕刊から。
記事によると,サウジアラビアへ向かっていた英国のタンカーが,ホルムズ海峡でイランに拿捕され,トランプ米国政権がホルムズ海峡を通る民間船舶を護衛するための有志連合の結成を呼びかけている。ネットの情報によると,英国はすでに駆逐艦1隻の急派を決めたという。

この記事の背景に英国の世界戦略があることを忘れてはいけない。「ユニオンジャックの矢」という考えが国際政治学にある。英国はロンドンから,アラブ首長国連邦の首都ドバイ,インドのハイテク産業の中心地のバンガロール,マラッカ海峡の要衝に位置するシンガポール,鉄鉱石や石炭などの資源に恵まれるオーストラリアへと勢力を拡大しつつ,その域内で人や物,金を回してきた。英語を話すインド人が中東やマレー半島に多く住むというのも英国の世界戦略の結果である。

今回のホルムズ海峡でのいざこざは,英国外交の生命線であるユニオンジャックの矢のど真ん中で発生している。BPやシェルなどの国際石油資本を抱える英国が本領を発揮する場面である。トランプ米国大統領のスタンドプレーの陰に隠れた英国の動きに注目していきたい。

「コンゴ エボラ『感染の拡大恐れ』」

本日の東京新聞夕刊に,アフリカ西部のコンゴ民主共和国で,致死率80-90%のエボラ出血熱が猛威をふるっているとの記事が掲載されていた。人の血液や吐物,排泄物,また野生動物からも感染し,高い確率で死に至り,日本の国立感染症研究所でも分析が進んでいるが,人の血液や吐物,排泄物,また野生動物との接触からも感染が拡大し,有効な治療が見いだせていない。

地理選択者は,地図帳でコンゴ民主共和国(旧ザイール)の位置を確認してほしい。コンゴ民主共和国は赤道上の国であり,東西を貫くコンゴ川は,流域面積と流量はアマゾン川に次いで世界2位であり、流域の熱帯雨林もアマゾン川に次ぐ広さを持つ。

地図帳で確認した生徒はもう気づいているだろう。コンゴの西側に同じ国名のコンゴ共和国という国がある。もともとアフリカ西部には20世紀初頭まで,コンゴ川沿いに,コンゴ王国という国が治めていた。しかし欧州による分割統治によって,ベルギー領のコンゴ民主共和国と,フランス領のコンゴ共和国,ポルトガル領のアンゴラ王国に3分割されてしまう。

今回はコンゴ民主共和国の話であるが,人口は8135万人を数える。1億8000万人w