本日の東京新聞朝刊に,ロシアの首相が択捉島を訪問したとの記事が掲載されていた。
地図帳は世界の趨勢に合わせて,毎年(毎月?)更新されている。しかし,小学校,中学校,高校では文科省がきちんと検定した地図帳しか使用することができない。その大きな理由は,国境と台湾問題を含めた東アジア情勢である。現在日本政府は,北方四島,竹島,尖閣諸島を含めて日本の領土としており,そうした領土がきちんと画定されていない地図帳は文科省の検定をクリアーすることはできない。
また,日本は1972年日中国交正常化の際に,中華人民共和国政府を「中国の唯一の合法政府」とし,台湾は中国の一部という見解を承認したので,台湾が完全な独立国であるという表記は認めていない。しかし,台湾は米国と軍事同盟を結んでおり,冷戦時代には日本と同じく西側諸国の一つであった。日本と台湾は正式な外交関係はないものの,民間団体が中心となって経済的には不即不離の関係となっている。そのため,台湾をクローズアップすることはしないものの,独立国に似た表記をすることとなっている。地理Aの教科書にも地理Bの教科書にも台湾だけの章立ては存在しない。しかし,「アジアNIES」や中国の経済特区などの経済面では取り上げられる微妙な記載となっているのは,日本政府の微妙な見解が反映されているからだ。
さて,北方四島である。択捉島,国後島を含めて北方四島は,歴史的に日本の固有の領土であることは間違いない。しかし,日本はロシアに原油や天然ガスなどの資源を頼っているため,強く言い出すことができない。またロシアの方も日本のエネルギー状況を強気の外交姿勢を崩していない。いま日露外交の話題にのぼっている北方四島を経由する天然ガスのパイプなど作ってしまったら,択捉島や国後島は永久に返ってこないであろう。地理選択者は日本のエネルギー政策という観点から,領土問題を展望してほしい。