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「日本,IWC脱退 商業捕鯨あす31年ぶり再開」

本日の東京新聞朝刊に,日本が国際捕鯨委員会を脱退し,明日から領海(1852m×12海里=22.2km)と排他的経済水域(1852m×200海里=370km)内で商業捕鯨を再開すると記事が掲載されていた。

これまで日本は「調査捕鯨」という名目で,南極周辺の南氷洋やアリューシャン列島以北のベーリング海周辺で年数百頭のクジラを捕獲してきた。国際的枠組みで禁止されているにも関わらず,クジラの生態を調査するという目的で,商業ベースに近い捕鯨を30年近く続けてきたのだ。そうしたグレーな調査捕鯨を廃止し,国際捕鯨委員会を脱退した上で,EEZ内で捕鯨を再開するというのは分かりやすい動きである。

但し,商業捕鯨に関しては,賛成派も反対派も数値データよりも,水掛け論になりがちな文化や宗教をもとに主張を繰り返している。日本政府も「鯨食文化」に固執するが,果たしてどこまで復活するであろうか。小学校の頃,給食でクジラの竜田揚げが出たが,子供の味覚ではあまり美味しいとは感じなかった。

また,昨年インドネシアの国立公園の海岸に打ち上げられたマッコウクジラの死体から、6キロ近くのプラスチックごみが発見されたり,タイ南部では80枚あまりのプラスチック袋を飲み込んだゴンドウクジラが衰弱死したとの報道もある。クジラは肉食なので,他の魚の体内にあったプラスチックも一緒に飲み込んでしまう。タイのゴンドウクジラは救助活動の途中に5枚のプラスチック袋を吐き出したとのこと。国際捕鯨委員会もクジラを守りたいのであれば,商業捕鯨を巡って対立する前に,法の目を逃れて海洋に排出されるプラスチックゴミ問題に一丸となって取り組むべきであろう。

参考動画

「メキシコ国境 父娘おぼれ死ぬ」

本日の東京新聞夕刊に,米国とメキシコの国境となっているリオグランデ川で,エルサルバドル出身の父娘の水死体が見つかったとの記事が掲載されていた。記事を読み,現場での状況を想像するに,やりきれない気持ちになる。

父娘はエルサルバドルを出て,米国へ難民認定の申請をしていたが,手続きが進まず無謀な賭けに出たようだ。エルサルバドルであるが,正直日本人には馴染みが薄い国である。ネットで検索してみたところ,決して貧困で喘いでいる国柄ではない。一人あたりのGNIも182カ国中,117位である。一方,治安は悪化の一途を辿っており,人口10万人当たり殺人発生件数は2016年には82,84人であり,世界ワースト1位となっている。

 

「BONSAI輸出に『可能性』」

本日の東京新聞朝刊の埼玉中央版に,EU向けに年間1万鉢以上輸出されている埼玉の盆栽であるが,今年2月に発行した日本とEUの経済連携協定(EPA)による関税撤廃で,更なるマーケットの拡大が見込まれるとの記事が掲載されていた。ガーデニング文化のあるヨーロッパでは盆栽人気が根強いという。

日EU・EPAは,自動車や工業製品,チーズなどの食料品,ワインなどのアルコールといった商品にばかり注目が集まっていたが,まさか盆栽が成長が見込まれる輸出品になるとは。

「プラごみ減『バンコク宣言』」

本日の東京新聞朝刊に,東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会談で,法規制強化を盛り込んだ海洋ゴミ問題に関する共同宣言で合意に達したほか,ミャンマー政府によるロヒンギャへの迫害や,中国による南シナ海の軍事拠点化について論議されるとの記事が掲載されていた。

以下,外務省のホームページより

ASEAN(東南アジア諸国連合)とは
東南アジア10か国から成るASEANは,1967年の「バンコク宣言」によって設立されました。原加盟国はタイ,インドネシア,シンガポール,フィリピン,マレーシアの5か国で,1984年にブルネイが加盟後,加盟国が順次増加し,現在は(ベトナム,ミャンマー,ラオス,カンボジアを加えた)10か国で構成されています。2015年に共同体となったASEANは,過去10年間に高い経済成長を見せており,今後,世界の「開かれた成長センター」となる潜在力が,世界各国から注目されています。2017年に設立50周年を迎えました。

ここ2,3年,EUやNAFTAの解体,G7サミットやTPPの停滞とは対照的に,ASEANの元気の良さが目立つ。域内に人口2億6千万人のインドネシア,1億人のフィリピン,9千万人のベトナム,7千万人のタイを抱えており,ASEAN主導でインド洋から太平洋へ繋がる地域協力体制が構築されて行くのだろうか。今後とも政治だけでなく,経済,文化,軍事,環境に至るまで目が離せない地域であることは間違いない。

ちなみに,私が予備校時代に習ったASEANの覚え方は,「胸むなに汗あん,死因はフィリピンの大麻(67アセアン,ンガポール,インドネシア,フィリピンタイレーシア)」である。25年以上も前の内容なのに,なぜか忘れないんだよね。

 

「ナスカ地上絵 3点の鳥特定」

本日の東京新聞夕刊にナスカの地上絵に関する記事が掲載されていた。
南米ペルーの地上絵は紀元前2世紀から8世紀にかけて栄えたナスカ文明の時代に描かれたものと推測されている。
歴史ロマンはさておき,地理選択者は,なぜ2000年近くも地上絵が残されていたのかという疑問を大切にしてほしい。少し見にくいが以下がナスカ周辺の雨温図である。ナスカは砂漠気候(BW)に属し,寒流のペルー(フンボルト)海流の影響を受けて,ほとんど雨が降らない。年平均降水量はたったの4mmであり,降雨によって土が流されたり,植物や動物によって荒らされることがない。そうした好条件(?)が重なって,ナスカの地上絵が残されたのである。記事にあるように雨乞いを目的にペリカンを描いたというのも納得である。

なお,地理的に補足すると,寒流が沿岸を流れる地域では,海上近くの空気が冷やされ,上昇気流が起こらないために、雨が降りにくくなる。特に地球上で最も強い寒流であるペルー海流が流れる地域は乾燥度が強くなる。ペルーの南にあるチリのアタカマ砂漠や,アフリカ南西部のナミブ砂漠も合わせて覚えておきたい。また,エクアドル沖合のガラパゴス諸島も赤道直下に位置するが,やはり寒流の影響で降雨は少なく,イグアナやゾウガメなどの乾燥に強い生き物が誕生している。世界の海流の地図もすぐにイメージできるようにしておきたい。