地理」カテゴリーアーカイブ

「グリーンランド買収意欲認める 米大統領」

本日の東京新聞夕刊に,トランプ米大統領がデンマーク領グリーンランドの買収に動き出すとの記事が載っていた。
グリーンランドというとカナダの北部にあり,メルカトル図法(地理選択者は正角図法と覚えておこう)では,実際以上に歪が拡大されて表現されてしまう世界最大の島である。俄には信じられないが,赤道上のコンゴ民主共和国よりも小さい国である。

トランプ大統領が買収するということで,対ロシアとの緊張が高まるのではとの懸念が指摘されるが,人間が居住できる(エクメーネ)のは沿岸部のわずかな地域のみで,内陸の大半はアネクメーネとなっている。アメリカはルイジアナやアラスカなど買収によって領土を拡大してきた歴史があり,グリーンランドが51番めの州となっても不安こそあれ,違和感はない。

むしろ,グリーンランドがデンマーク領だという方が違和感が強いのでは。北海の資源を巡って新たな火種を作るのであれば,いっそのこと国際共同管理とし,グリーンランド西北部のカーナークに駐留するチューレ米空軍に撤退を頂くというのは如何であろうか。

「インドネシア首都移転」

本日の東京新聞朝刊に,インドネシアのジョコ大統領が,首都をジャワ島のジャカルタからカリマンタン島へ移転すると表明したとの記事が掲載されていた。

インドネシアでは,19世紀から中心のジャワ島から西部のスマトラ島や北部のカリマンタン島,スラウェシ島などへ住民を移住させる「トランスミグラシ政策」が進められてきた。しかし,移転先の先住民族との共存が上手く行かず,各所で弊害が生じてきた。現在では,13万平方キロのジャワ島に,2億3千万人のインドネシアの人口の約6割にあたる1億3千万人が住んでいる。人口密度はざっと1平方キロに約1,000人となっている。

オーストラリアのキャンベラやブラジルのブラジリアなど,首都移転によって新たに計画都市が作られた先例がある。カリマンタン島は赤道が横断する島なので,政治都市だけでなく観光都市という側面も持つのであろうか。

「トウモロコシ畑の奇跡」

本日の東京新聞朝刊に,乗客230人を乗せた旅客機が突発的な事態で,モスクワ郊外のトウモロコシ畑に突っ込んだものの,奇跡的に一人の死者も出すことなく無事に胴体着陸したとの記事が掲載されていた。

記事を読んで,はてと思った。とうもろこしは乾燥に強いものの寒冷には弱い作物である。亜寒帯気候のモスクワでトウモロコシが栽培されていたのであろうかと疑問に思った。
調べたところ,確かにトウモロコシは中米原産で,温帯から熱帯にかけての土地で栽培され,栽培期間中(90日〜150日)は日平均気温15℃以上、最低気温10℃以上で霜の降りない事が条件となる。また,低温と霜には,非常に感受性が高く,発芽適温は18~20℃となる。モスクワの年間降雨量は平均して700mm程度あるものの,年間平均気温は約5℃しかない。
いったい,亜寒帯気候のモスクワはトウモロコシの栽培条件から外れるのではないか。

そこで,ネットでモスクワの雨温図を調べたところ,下記のようなグラフ図であった。

モスクワの雨温図

モスクワのハイサーグラフ

モスクワは内陸性(大陸性)気候のため,年較差が大きく,冬は寒いが,夏は暑いという特徴を持つ。グラフをよく見ると,冬は北海道以上に冷え込むが,6月〜8月の平均気温は20度近い。おそらくは,栽培期間の短い種を使用し,8月下旬あたりには収穫してしまうのではないだろうか。もし来月不時着していたら,大惨事となっていたであろう。
トウモロコシの栽培限界を考えた時,トウモロコシ畑という場所の奇跡だけでなく,収穫前であったという時期の奇跡も見えてくる。

「印パ対立激化」

本日の東京新聞国際面に,カシミール地方を巡るインドとパキスタンの軍事衝突の危険に対する記事が掲載されていた。

気になったのは,下段の記事で,カシミール地方の一部領有権を主張する中国が,インドとの対立から,パキスタンを全面的に支持しているという内容だ。パキスタンと言っても,日本人にはピンと来ない国である。砂漠が広がり,イスラム教のあまり金持ちではない国というイメージであろうか。地図を見れば分かるが,パキスタンは日本の国土の2倍の面積があり,しかもインド洋に面しており,人口も2億人近い。インド洋の経済支配を狙う中国にとって魅力的な市場である。

カシミール問題が,インドと中国の2大国の代理戦争となってはいけない。また,インド人もパキスタン人も日本にたくさん住んでおり,郊外を中心にコミュニティーも形成されているので,カシミール紛争による移民や難民が日本に大量にやって来るという事態は容易に想像できる。

「混迷のイエメン内戦」

夏期講習で,一人あたりのGNIを尋ねる問題において,「中東最貧国」と失礼な紹介をしたイエメンに関する記事が掲載されていた。
記事を読んでも,内戦の勢力図はよく分からない。但し,国連が「世界最悪の人道危機」と表現するように,国民の3人に1人にあたる約1千万人が飢えに苦しんでいるというのは看過できない情勢である。1990年の南北統一後も続く確執に加え,サウジアラビアのスンニ派とイランのシーア派との宗教戦争,さらには紅海に面した地政学的な大国の対立もあり,「紛争のデパート」のような状態になっている。

日本のタンカーも年間2000隻近くがイエメンに面したスエズ運河−紅海を通行しており,日本政府も自衛隊派遣を検討している。ここまで事態が複雑化したイエメンについては,「有志連合」なる英米主導の軍事連合ではなく,国連安保理の枠組みの中で議論し,日本も何らかのアクションをすべきなのであろう。