「トウモロコシ畑の奇跡」

本日の東京新聞朝刊に,乗客230人を乗せた旅客機が突発的な事態で,モスクワ郊外のトウモロコシ畑に突っ込んだものの,奇跡的に一人の死者も出すことなく無事に胴体着陸したとの記事が掲載されていた。

記事を読んで,はてと思った。とうもろこしは乾燥に強いものの寒冷には弱い作物である。亜寒帯気候のモスクワでトウモロコシが栽培されていたのであろうかと疑問に思った。
調べたところ,確かにトウモロコシは中米原産で,温帯から熱帯にかけての土地で栽培され,栽培期間中(90日〜150日)は日平均気温15℃以上、最低気温10℃以上で霜の降りない事が条件となる。また,低温と霜には,非常に感受性が高く,発芽適温は18~20℃となる。モスクワの年間降雨量は平均して700mm程度あるものの,年間平均気温は約5℃しかない。
いったい,亜寒帯気候のモスクワはトウモロコシの栽培条件から外れるのではないか。

そこで,ネットでモスクワの雨温図を調べたところ,下記のようなグラフ図であった。

モスクワの雨温図

モスクワのハイサーグラフ

モスクワは内陸性(大陸性)気候のため,年較差が大きく,冬は寒いが,夏は暑いという特徴を持つ。グラフをよく見ると,冬は北海道以上に冷え込むが,6月〜8月の平均気温は20度近い。おそらくは,栽培期間の短い種を使用し,8月下旬あたりには収穫してしまうのではないだろうか。もし来月不時着していたら,大惨事となっていたであろう。
トウモロコシの栽培限界を考えた時,トウモロコシ畑という場所の奇跡だけでなく,収穫前であったという時期の奇跡も見えてくる。