地理」カテゴリーアーカイブ

「『極端な気象』大被害」

本日の東京新聞朝刊に、地球温暖化による甚大な災害をもたらす「極端な気象」に関する記事が掲載されていた。極端な気象とは、一昨年の西日本豪雨や昨年の台風19号で歴代1位の箱根での1日の降水量922.5mmの記録、全国的に1日に100mm以上の大雨が降る日の増加に見られるように、日本近海の海水温の上昇が原因と見られる異常気象である。

海水温が上がると、海面上の空気も温められ、飽和水蒸気量(空気が水蒸気)が大きくなるのでより降水量が多くなる。逆に海水温が下がると飽和水蒸気量が小さくなるので、降水量が少ないというのは、昨年の地理Aの授業の南米のところで強調したところである。フンボルト海流(ペルー海流)やガラパゴス諸島、ゾウガメやイグアナなどの単語を覚えているでしょうか。

近年、房総半島周辺で熱帯の海にしか生息できないサンゴ礁やクマノミ、キンチャクダイが見つかっている。大気温に比べ水温は変化が少なく、1度の違いでもそこに生息する海洋生物にとってはとてつもない大きな影響を及ぼす。
イギリスでもj、周辺の北海海域の水温上昇で、名物料理のフィッシュ・アンド・チップスに使われるタラやハドックなどの寒海魚が姿を消しつつあるという。日本でも、ニシンやホッケ、タラなどの寒海魚が獲れなくなってしまうかもしれない。また、授業内容の変更が必要なのか。。。

「ペットボトルから缶へ」

本日の東京新聞夕刊に、海洋プラスチック汚染への対処として、企業や官公庁でペットボトルから缶へ移行が徐々に進んでいるとの記事が掲載されていた。

アルミ缶のリサイクル率は94%、ペットボトルは同84%となっている。いずれも欧米に比べ極めて高い率となっている。但し、国連環境計画(UNEP)によると、日本国民一人当たりのプラスチック容器ゴミの排出量は年間約32kgで米国に次いで世界ワースト2位である。

日本の夏はヨーロッパに比べて寒暖差と乾湿差が大きく、冬の寒さと乾燥により暖かい飲料が好まれ、夏は熱中症対策で水分補給が欠かせない。日本と飲料は切っても切れない関係である。江戸時代からいつでもどこでも水を飲むという習慣が日本の生活に根付いている。

ペットボトルの飲料を飲むなということではなく、マイバッグやマイボトルを持ち歩く方が、節約に繋がるしカッコいいという宣伝が必要である。芸能人やユーチューバーが広告塔になっても良いし、学校教育の中で環境教育を進めていくことも一案である。2年後から始まる地理総合の中で、海洋汚染をとりあげつつ、家庭基礎の消費者教育と連携する総合的学習も考えられる。

「合成繊維のくずが海汚す」

本日の東京新聞朝刊に、フリースなどの合成繊維の糸くずがマイクロプラスチックとなって、海洋汚染に繋がるとの記事が出ていた。

近年コンビニのレジ袋の有料化やスターバックスのプラスチック製ストローの使用禁止など、マイクロプラスチックを巡る企業の取り組みの報道が増えている。勿論、その背景には環境に配慮したという企業イメージの宣伝もあるのだが、沿岸部だけでなく公海の汚染に消費者の関心が集まるのは良いことである。

記事にもあるが、マイクロプラスチックというとペットボトルの破片や人工芝の切れ端など、いかにも石油化学製品といったイメージが強い。しかし、東京農工大の高田教授が指摘しているように、合成繊維のくずは洗濯機のフィルターや下水処理で全てを取り除くことは難しく、二枚貝の体内から見つかったマイクロプラスチックの2割を占めるまでに至っている。

ストローやレジ袋と違い、消費者の目に見えないマイクロプラスチックでは、注意の喚起も難しい。世界自然保護基金(WWF)の三沢さんが述べるように、環境に配慮した服を使い捨てずに長く着ることが大切である。

「沈黙スーチー氏に住民失望」

本日の東京新聞朝刊に、環境破壊のおそれのあるミャンマー北部のミッソンダムをめぐるミャンマー国内の受け止め方に関する記事が掲載されていた。

記事にもあるように、中国は、習近平国家主席が中国、アジア、欧州、アフリカを結ぶ経済構想「一帯一路」を立ち上げて以来、就中インド洋の制覇に力を注いでいる。

今後数十年、人口が増加し市場の拡大が見込まれるのはアフリカである。現在12億人の人口が、2050年には25億人、2100年には44億人に爆発すると予想されている。そのアフリカに投資を続けているのが中国である。

しかし、中国からアフリカは遠い。現在は中国沿岸部から、シンガポールとマレーシア、インドネシアの3国に挟まれたマラッカ海峡を通って、インド洋を横切ってアフリカ東部に行く航路しかない。しかしこの航路はイギリスの息のかかったシンガポールを経由することになり、中国にとってはまことに具合が悪い。

そこで、中国はマラッカ海峡を経ずに直にインド洋に出られるために、中国からミャンマーまで高速道路と貨物鉄道で結び、ミャンマーを親中国に仕立てあげようと融資を拡大している。

ミャンマーは大統領制をとっているのだが、実質はイギリスに留学経験があり、ノーベル平和賞を受賞したアウン・サン・スー・チー国家顧問が内政も外交も握っている。(外国籍の親族を持つものは大統領になれないため)

授業でも少しだけ扱ったのだが、ミャンマー国内には、ちょうど中国が進出を狙っているミャンマー沿岸にあるラカイン州に住む、ロヒンギャの問題を抱えている。現政権は、イスラム教が主流のロヒンギャを隣国のバングラデシュに強制的に移住させようと軍事圧力を加えている。しかし、アジア最貧国レベルのバングラデシュに受け入れる余地はなく、ミャンマー国境沿いで数十万人ものロヒンギャが難民化している。

記事にあるダム建設と同じく、難民問題も中国サイドの圧力が背景にあることは容易に推測できることである。ミャンマーは天然ガスや米くらいしか輸出できない貧しい国なのに、インド洋に面しているという地理的条件のために、政治も経済も歪められてしまうのである。

次年度の授業でも貿易問題については、最新のニュースと統計に基づいて考えていきたい。

「日米貿易協定あす発行」

本日の東京新聞に、今秋締結した日米貿易協定に関する簡単な記事が掲載されていた。来月より、米国産の牛肉や豚肉、チーズなどの関税が大幅に下がる。コメだけはTPP交渉と同様の形で、関税を課すことで国内農家に配慮したものの、それ以外の農産品は海外の安い輸入物との際限ない価格競争に晒されることになる。

一方、日本からの輸出の大半を占める自動車や自動車部品については、関税が廃止されると、米国の自動車メーカーが打撃を受け、労働者の賃金や解雇などの実害が生じるということで、追加の関税こそ免れたものの、廃止の見込みはない。

但し、話はこれで終わらない。今後は保険や医療などさまざまな分野についても、米国企業の参入が声高に要求されることは必至である。古い話だが、1858年の日米修好通商条約でも、日本は不条理な大幅譲歩を迫られた。今回の日米貿易協定でも、米国が決めた「市場開放・透明化」を押しつけ、様々な圧力で妥協を迫るものである。

これからの日本の第一次産業がどのように成長・衰退していくのか、その分岐点が2020年ということになるであろう。