「沈黙スーチー氏に住民失望」

本日の東京新聞朝刊に、環境破壊のおそれのあるミャンマー北部のミッソンダムをめぐるミャンマー国内の受け止め方に関する記事が掲載されていた。

記事にもあるように、中国は、習近平国家主席が中国、アジア、欧州、アフリカを結ぶ経済構想「一帯一路」を立ち上げて以来、就中インド洋の制覇に力を注いでいる。

今後数十年、人口が増加し市場の拡大が見込まれるのはアフリカである。現在12億人の人口が、2050年には25億人、2100年には44億人に爆発すると予想されている。そのアフリカに投資を続けているのが中国である。

しかし、中国からアフリカは遠い。現在は中国沿岸部から、シンガポールとマレーシア、インドネシアの3国に挟まれたマラッカ海峡を通って、インド洋を横切ってアフリカ東部に行く航路しかない。しかしこの航路はイギリスの息のかかったシンガポールを経由することになり、中国にとってはまことに具合が悪い。

そこで、中国はマラッカ海峡を経ずに直にインド洋に出られるために、中国からミャンマーまで高速道路と貨物鉄道で結び、ミャンマーを親中国に仕立てあげようと融資を拡大している。

ミャンマーは大統領制をとっているのだが、実質はイギリスに留学経験があり、ノーベル平和賞を受賞したアウン・サン・スー・チー国家顧問が内政も外交も握っている。(外国籍の親族を持つものは大統領になれないため)

授業でも少しだけ扱ったのだが、ミャンマー国内には、ちょうど中国が進出を狙っているミャンマー沿岸にあるラカイン州に住む、ロヒンギャの問題を抱えている。現政権は、イスラム教が主流のロヒンギャを隣国のバングラデシュに強制的に移住させようと軍事圧力を加えている。しかし、アジア最貧国レベルのバングラデシュに受け入れる余地はなく、ミャンマー国境沿いで数十万人ものロヒンギャが難民化している。

記事にあるダム建設と同じく、難民問題も中国サイドの圧力が背景にあることは容易に推測できることである。ミャンマーは天然ガスや米くらいしか輸出できない貧しい国なのに、インド洋に面しているという地理的条件のために、政治も経済も歪められてしまうのである。

次年度の授業でも貿易問題については、最新のニュースと統計に基づいて考えていきたい。