地理」カテゴリーアーカイブ

「石炭火力の輸出」

本日の東京新聞朝刊の社説に、石炭火力発電輸出に疑問を投げかける社説が掲載されていた。環境面だけを考えれば、石炭発電よりも環境負荷の小さい天然ガス発電や再生可能エネルギーにシフトせよという主張は十分に理解できる。しかし、東南アジアやアフリカの後発発展途上国の現状を考えると、石炭火力も選択肢の一つに組み入れざるを得ないのではないかと思う。

少し解説を加えてみたい。中東やロシア、北アフリカや南米の一部といった産出地域が限られ、供給が不安定な天然ガスに比べ、石炭は広範な地域で産出され、地政学的なリスクが低い。そのため、2018年度の日本の石炭火力の発電量は全体の32%程度に上る。液化天然ガス(LNG)火力の38%程度に次ぐ規模となっている。

そうした中で、今月2日に、日本政府は二酸化炭素を多く排出する非効率な石炭火力発電所を2030年度までに段階的に休廃止すると発表した。なかなかの英断だと評価する向きもあったが、高効率の石炭発電所の新設や、石炭発電の輸出計画も合わせて発表され、パリ協定を蔑ろにするとの批判も出ている。東京新聞の社説もそうした意見に与したものとなっている。

私も再生可能エネルギーの研究・開発に重きを置き、それまでは天然ガスのコンバインドサイクル発電を活用していくべきであると考える。しかし天然ガスは中国やロシアがしのぎを削って採掘に力を注いでおり、天然ガスに頼るということは、米中、米露の政治対立に巻き込まれやしないかと不安を感じてしまう。北極海や南シナ海の緊張を考慮すると、国際政治や軍事衝突に巻き込まれなくて済む石炭火力を、もうちょっとだけ延命させても良いと思う。

原子力発電の是非も含め、エネルギー問題は3学期の授業の中で、一緒に考えていきたいテーマです。

「米、中国5社利用の企業排除」

本日の東京新聞朝刊に、スマホやサーバーを通じて中国に情報や技術が流出されていると、米国政府が中国企業5社の製品やサービスを使う企業を排除すると発表したとの記事が掲載されていた。

地理の授業でも触れたが、ここ数年の米中貿易問題の大きな課題が、この先端技術や特許技術の中国の盗用疑惑である。特に華為技術(ファーウェイ)は、元中国人民解放軍所属の軍事技術関係者が深圳に創業した企業であり、中国公安部や軍との緊密な関係が疑われている。

「一帯一路」経済圏構想に基づき、世界第1位の大国を狙う中国との付き合い方は、国や企業だけでなく、日本人一人ひとりの懸案事項ともなっている。紀末後の授業では東南アジア、南アジアと入っていくが、中国の問題に何度も触れることとなるであろう。

「韓国系企業69%『環境悪化』」

本日の東京新聞朝刊に、日本による半導体の材料の対韓輸出規制強化措置により、韓国系企業の7割が環境が悪化しているとの調査報告の記事が掲載されていた。
ちょうど今日の発表でも韓国が取り上げられており、一昨年あたりからの日韓関係の悪化について触れておきたいと思う。

授業の復習にもなるが、戦前の日韓併合以降、日本は韓国を蔑視し、韓国人の女性を関東軍の「慰安婦」として強制的に従軍させたり、韓国人の若者を日本の炭鉱などへ強制連行させたことが分かっている。そうした戦前の犯罪について、日本政府は1965年の日韓基本条約で解決済みだとし、実際に徴用された民間の方々に真摯な謝罪をする姿勢を放棄している。そのため、一昨年に戦前に連行や徴用された方々が裁判を起こし、賠償金の支払いを巡って韓国国内の日本の製鉄所の差し押さえる事態が生じている。その判決を韓国の文在寅大統領も支持したため、日本の安倍内閣は反発し、輸出規制という政策を打ち出すこととなった。なお、1965年当時は佐藤栄作内閣で、安倍首相の叔父にあたる。

では日韓国交正常化の際に、日本は戦前の行為に対する正式な謝罪と賠償を行なったのかというと、そうではない。1910年の日韓併合条約は「もはや無効」であり、正式な謝罪は不要。また、当時支払われた5億ドルの経済援助は、もともと米国が韓国の共産化を防ぐために用意していた予算だったのだが、ベトナム戦争で財政難に陥ったため、日本が米国の肩代わりをしたものである。だから日本政府は韓国の軍事政権と米国の冷戦戦略を下支えしただけで、戦前の非道な行為に向き合うことはなかったのである。

韓国政府と日本政府の交渉よりも、まずは戦前の韓国での日本軍の行為と、戦後の日韓関係の歴史をきちんと学ぶことが大切である。

 

 

「スーチー政権 表現の自由後退」

本日の東京新聞夕刊に、アウンサン・スー・チー国家顧問率いる国民民主連盟政権発足後、報道の自由が軍事政権よりも後退している実態が報じられていた。

私はロヒンギャ弾圧が報じられ始めた3年ほど前から、スー・チー政権には懐疑的である。スー・チーさんは家族が外国籍であるため、大統領になることができず、国家顧問という何でもありの権限を持った特別職に就いている。彼女はミャンマー独立の立役者のアウンサン将軍を父に持ち、イギリスで学び、帰国後に民主化運動を率いたということで長く自宅軟禁生活を送ることになった。欧米のマスコミをうまく味方につけ、ノーベル平和賞まで受賞している。時にはイギリス型の民主主義を、時には仏教の慈愛の精神を持ち出すなど、八方美人な行動が目立つ人物である。

記事には触れられていないが、近年は露骨に中国にも色目を使い、中国資本の導入に躍起となっている。政治的にも経済的にも歪みが大きくなっている。民主主義や自由、平等といった誰しもが反対できない看板を掲げて政権をとることの危険性は、ぜひとも世界の歴史から学んでいきたい。

今日よりプレゼン発表が始まり、ポルトガルとドイツが取り上げられたが、誰かミャンマーについて発表してくれないだろうか。

「中印衝突 インド軍20人死亡」

本日の東京新聞朝刊に、中国とインドの間の国境未確定地域で両軍が本格的に軍事衝突をし、死亡者まで出たとの報道があった。記事によると、軍事衝突で死者が出るのは、1975年以来、45年ぶりである。

地図帳P27の南アジアの地図を見てください。パキスタンの首都イスラマバードから北西に400kmほどの、カラコルム山脈のところにラダク(Ladakh)と呼ばれる地域があります。地図の色で見ると、標高3,000mを超える山岳地帯です。

おそらくは、中国進出の背景にはパキスタンとの何らかの関係が含まれているものと推測できる。国際政治のセオリーは、「敵の敵は味方」です。インドの宿敵であるパキスタンに対し、中国が秋波を送ったのではなかろうか。