大学短大専門学校案内」カテゴリーアーカイブ

パンフレット研究:長岡科学技術大学

高等専門学校卒業生の受け皿として、1976年に開学した2校ある科学技術大学の一つである。ちなみにもう一つは豊橋科学技術大学である。両校とも3年時編入の高専卒業生が8割を占める特異な大学である。大学院進学率が9割を占め、2009年度の大学別就職率ランキングでは就職率97.1%で全国第1位となっている。

工学部の中に、機会創造工学、電気電子情報工学、材料開発工学、建設工学、環境システム工学、生物機能工学、経営情報システム工学の7学科と大学院研究科、そして社会人向けの専門職大学院システム安全専攻が設けられている。

高専卒業の意欲ある学生が大半なので、大学院修士課程との6年一貫教育が敷かれ、学部4年時の5ヶ月にわたるインターンシップや全国の高専との協働による「技術者育成アドバンストコース」など、技術者育成にとってこの上ない環境となっている。また、別冊で140近い研究室全てが1ベージ丸ごと紹介されている「学生が書いた研究室ガイドブック」もある。

普通科高校からの進学はほとんどないので、今の私の立場で参照することはないが、日本のものづくりの現場で、高専からの10年一貫教育で育てられた技術者が活躍しているという現実はしっかりと受け止めておきたい。

パンフレット研究:兵庫県立大学

聞きなれない大学だと思ったら、2004年に神戸商科大学と姫路工業大学、兵庫県立看護大学の3大学が統合された新しい大学である。経済学部、経営学部、工学部、理学部、環境人間学部、看護学部の6学部と12の大学院研究科を擁する規模の大きい公立大学である。

大学側は「統合による相乗効果と総合大学ならではのメリットを活かした新しい知の創造」を進めると鼻息荒いが、旧3大学の学部をそのまま引き継いだだけであり、各学部・研究科は県内各地に点在しており単なる寄せ集めの域をでないであろう。1年次は2つのキャンパスに集約してで全学共通科目が置かれているが、総合大学のメリットを活かすような特段の配慮は見られない。また、キャンパスが離れているため、他学部で開講される講義が受けられるよう「遠隔授業システム」が導入されているが、多分ほとんど活用されていないであろう。各学部別のパンフレットが用意されているのであろう、学部での専門科目の説明は省かれていた。

唯一統合のメリットを受けているのは、付属中学校・高等学校であろう。付属高等学校では理数教育や国際理解教育に重点が置かれ、海外学校との交流やSSH事業指定を受けるなど、エリート教育が実施されている。県立大学への特別推薦入学制度もあり。中高大の連携教育の今後が期待される。

パンフレット研究:小樽商科大学

名前からてっきり公立大学と思っていたが、パンフレットを見ると国立大学であった。1911年に開学した小樽高等商業学校からの流れを汲み、創立100年を超える伝統校である。小樽高等商業学校時代には文学者の伊藤整や小林多喜二などが学んでいる。1949年に小樽商科大学として再出発し、1971年に修士課程、2007年には博士課程が設置されている。現在では「商学部」の下に「経済学科」「商学科」「企業法学科」「社会情報学科」の4学科が設けられている。

学長自らが「就職名門校」と称しており、パンフレットも就職内定率がでっかく宣伝されている。各学科の専門科目においても基本的には実学志向が強く、「無駄」な科目が一切省かれている。
一方、さすが国立大学と思わせるのは共通科目の充実である。全学生が「知の基礎系」として、基礎科目を26単位、外国語科目14単位を含む52単位を学ぶカリキュラムになっている。また専門共通科目として、哲学や心理学、文学、現代思想、国際関係論、化学、物理学、英語などが3年次、4年次も学べるようになっている。
小樽商科大学側が「くさび型カリキュラム」と称するように基礎科目の充実と体系だった専門科目の組み合わせは、大学教育の基本であると思う。貧相な基礎科目群とただ科目を羅列しただけの専門科目群の組み合わせでカリキュラムを構成する大学が多い中で、小樽商科大学のスタンスは評価できる。実際、週間東洋経済の「本当に強い大学」特集でも、学生満足度や出世ランキングで上位にランクされている。

アメフト部の不祥事もあったが、地方の国立単科大学というメリットを充分に活かして、今後とも学生の教育にあたってほしい。

パンフレット研究:公立はこだて未来大学

パンフレットを手に取った時は胡散臭い大学だと思っていたが、読み込むにつれて面白さがにじみ出てくる内容であった。教員のMacintoshの所有率が高く、米Pixar社のような自由な雰囲気の大学である。1997年に函館市周辺の自治体が広域で設置した公立大学である。情報システムコース、高度ICTコース、情報デザインコースの3コースからなる情報アーキテクチャ学科、複雑系コースと知能システムコースの2コースからなる複雑知能学科の2学科からなるシステム情報科学部の単科大学である。

このうち複雑知能学科には、多核単細胞生物「粘菌」の情報処理能力の研究で裏ノーベル賞としても呼ばれるイグノーベル賞を2度も受賞した中垣俊之氏の研究室も置かれている。

また、カリキュラムも教養科目や語学科目はすっきりと省かれ、4年間の専門一貫教育の理念が貫かれている。大学院が設置されておらず、学部卒業生の8割近くが就職するという珍しい大学である。また、通常の授業やゼミとは別に一年間掛けて実施されるプロジェクト学習があり、パンフレットでも20以上のワーキンググループが紹介されている。

理系には珍しく大学院が設置されておらず、機械工学や建築工学、応用化学、生命科学といった金のかかる学科はなく、パソコン1台あれば完結するような情報システム学部のみの設置が、自治体への負担も少なく、個性的な改革ができるのであろう。

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パンフレット研究:奈良県立大学

1953年に開学した奈良県立短期大学商経科を母体とし、1990年に4年制の奈良県立商科大学商学部となり、2001年に奈良県立大学と名称を変更し、地域経済学科および観光経営学科からなる地域創造学部が設置されている。
パンフレットを読む限り、偏差値40台レベルの推薦やAO入試が中心の、郊外型女子大学となんら変わりはない。全く体系化されていない教育課程に、ただ「○○文化論」だの「国際〇〇」「観光英語」といった他と関連性のない教養科目がただ並べられている。一応「地域づくり」や「奈良の観光」といった大義名分があるから存続を許されているのであろうが、奈良県民の貴重な税金を使ってまで運用する価値のある大学であろうか。