投稿者「heavysnow」のアーカイブ

『検索バカ』

藤原智美『検索バカ』(朝日新書 2008)を読む。
芥川賞作家の著者が、テレビやラジオで語ってきたことが一冊の本としてまとめられている。著者自身がテーマについてまとめているので引用してみたい。

このところずっと、違和感というか、不快感を覚えていた言葉があります。
「検索上手」「情報整理の達人」「空気を読め」というような言葉を、いたるところで目にします。どうもイヤだな、これは違うぞ、という思いは、しだいに形になり、やがてそれは私たち現代人の「自立して考える」ことの衰え、という現象へといきつきました。
検索と情報処理にたけて、クウキ読みさえできれば、この世の中、うまく渡っていけるかのような昨今ですが、はたしてそうでしょうか? というのがこの本のテーマになっています。

ずばり、著者自身の言葉でまとめられたテーマの内容となっている。見事である。

『にっぽんの秘島』

ロム・インターナショナル編『にっぽんの秘島:行きたくなるガイド』(河出書房新社 2017)を読む。
参考文献をまとめた雑学本なのだが、最後まで楽しむことができた。海に囲まれた日本列島には6852の島が存在する。そのうち、伊豆大島や淡路島のような有人島が300、それ以外はすべて無人島である。その中から87の島について、地図や島の特徴、印象的なエピソードを交えて簡単に紹介されている。

取り上げられている島のいくつかは、内田康夫の旅情ミステリーの舞台となっているので、ひときわ郷愁めいた思いを感じた。千葉県の仁右衛門島や三重県のミキモト真珠島、山口県の祝島、大分県の姫島、沖縄の御嶽など、小説を読みながら地図を確認していたので、懐かしい出会いという感じだった。

「渋谷の公園 出入り突然制限」

本日の東京新聞朝刊に、渋谷駅周辺で暮らす路上生活者や困窮者に対して行われていた、渋谷区の美竹公園での炊き出し活動が突然中止に追い込まれたとの記事が掲載されていた。

地理からは少しずれるが、広く捉えれば、都心部のインナーシティ問題のカテゴリーに加えてよいであろう。インナーシティとは、ざっくりまとめると、都心周辺に位置する低所得者層の居住エリアのことである。細くまとめると、大都市の都心周辺に位置し、富裕層の郊外移転に伴い、老朽化した住宅や商店、工場などに低所得層や外国人労働者が流入し、周囲と隔絶したスラム街が形成されると定義される。こうしたインナーシティでは、路上での物売りや靴磨きなど、行政の管轄下にない不安定な就労形態のインフォーマルセクターと呼ばれる人たちが住みつくようになる。

こうした社会学や地理学的な視点に立って、都市問題として捉えるならば、路上生活者自身の自己判断とか自己責任として片付けられない問題としての側面が表れてくる。記事に出てくる支援団体の「のじれん(渋谷・野宿者の生存と生活をかちとる自由連合)」は1998年に結成されている。私の記憶が正しければ、渋谷の公園通りに面した勤労福祉会館で結成式が行われたはずである。支援者と被支援者の一方的な関係に基づいていた「いのけん(渋谷・原宿 生命と権利をかちとる会)」から、当事者を主体とした「のじれん」への衣替えを宣言した結成式に私も同席していたはずである。渋谷まで出掛けて行くのは難しいので、違った形での支援を考えてみたい。

「左派ルラ氏 ブラジル大統領返り咲き」

本日の東京新聞朝刊に、南米ブラジルの大統領選挙の結果、現職右派のボルソナロ氏が破れ、元職左派のルラ氏が通算3期目の登板を決めたとの記事が掲載されていた。

記事の後半に、ルラ大統領がロシア、中国、インド、南アフリカの新興5カ国(BRICS)の関係を重視するとの内容があった。BRICSはあくまで2000年以降に経済成長した括りに過ぎないと思っていた。ウィキぺディアで調べたところ、2011年に中国でBRICS首脳会議が開催されており、今年に入ってイランとアルゼンチンが加盟を申請しているとのこと。知らなかった。この5カ国だけで人口は30億人を超える巨大なアソシエーションとなる。政治的な中立を保っているインドの動向も気になるが、注目しておきたい記事であった。

『アインシュタインが考えたこと』

佐藤文隆『アインシュタインが考えたこと』(岩波ジュニア新書 1981)を読む。
調べてみると、20年前に読んだ本だった。アインシュタインの経歴にも触れているが、タイトル通り「アインシュタインが考えたこと」に関する話なので、アインシュタイン登場以前の近代科学の流れや、アインシュタインが着想した量子力学などが簡単にまとめられている。ブラックホールの話など分かりやすかった。