今日の朝刊の一面はどこも民主党鳩山党首の辞任報道であったが、政治のワイドショー化が徹底した結果であろう。ワイドショーで扱いやすい、画面に表われる鳩山、管氏の「人柄」で報道の方向性が決められている。実体の薄い小泉人気とあいまってますます政治が「分かりやすく」なってしまうのは恐い。
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『借金女王のビンボー日記』
中村うさぎ『借金女王のビンボー日記 だって、欲しいんだもん!』(角川文庫 1999)を読む。
75万円のカーテンを購入した翌日にはローンで90万円のソファーを買ってしまい、ひと月のカードの請求が450万円という浪費家の著者による、日常生活を面白おかしく描いたエッセイである。
シャネルやエルメスといったブランドバッグをアメリカンエクスプレスのカードで買いまくってしまうのだが、形而下的な物に対する現実感はない。あくまで著者を取り巻くのはブランド、信頼という記号である。ワニ革で、縫い方がどうで、大きさがこれくらいとディテールを詳細に記述すればするほど、あらゆる物がより綿密に記号化されていく。
ボードリヤールはこの世界について「現実原則が支配していた世界では、空想は実在のアリバイだった。ところが今日、シュミレーション原則が支配する宇宙で、モデルのアリバイと化したのは他ならぬ実在だ」と述べる。
田中康男の『何となくクリスタル』の頃までは、訳の分からないブランド商品でも実際に使う人間ドラマが分かりやすかったが、今回の中村うさぎは現実感の薄い人間模様に加えて記号が入ってくるので……。
扁桃腺が腫れて、鼻も出て来たので薬を飲んだら頭がぼーっとしてきた。このへんで。
『ジョンQ』
先日、ニック・カサヴェテス監督のアメリカ映画『ジョンQ』(2002 米)を観にいった。
金のかかっていない映画であったが、なかなか面白かった。デンゼル・ワシントン演じるジョンQが息子の心臓移植リストへの登録を要求するために、病院を占拠するわけだが、舞台劇を観ているような生々しさを感じた。
また面白いことにチェーンで占拠された病院内ではベテランの医者と新米の医者と患者と患者の家族の関係性が崩れていくのだ。そして新米の医者の口から貧乏人を救わない医療保険制度の欠陥が語られ、ベテランの医者の口からは医療体制の矛盾が語られる。ちょうど全共闘でのバリ封内での解放区のような議論が展開される。結局ジョンQは犯罪者として罪に問われるのだが、それはそのままアメリカの医療保険制度の不備を指摘するものであった。
『情報を捨てる技術』
諏訪邦夫『情報を捨てる技術』(講談社ブルーバックス 2000)を読む。
パソコンのハードディスク内の効率的な使い方の指南書である。特にマックユーザーには得るところない本である。しかし、この手の情報活用のハウツーものはきちんと読んだ上で、「くだらない、読む必要なし」と切り捨ててしまうくらいがよいのであろう。
『エクスタシー』
村上龍『エクスタシー』(集英社文庫 1995)を読む。
表題をつけるなら、「セックスとSMとドラッグに溺れた人間模様」と表されるのであろう。原著は1993年1月の刊行である。バブル経済に溺れる日本人の裏心情をSMとドラッグでもって象徴させるという手法は10年前は機能したのであろう。しかし、バブルもすっかり過去の記憶となった2002年の現在に読んでも正直ピンと来ない。

