中村うさぎ『借金女王のビンボー日記 だって、欲しいんだもん!』(角川文庫 1999)を読む。
75万円のカーテンを購入した翌日にはローンで90万円のソファーを買ってしまい、ひと月のカードの請求が450万円という浪費家の著者による、日常生活を面白おかしく描いたエッセイである。
シャネルやエルメスといったブランドバッグをアメリカンエクスプレスのカードで買いまくってしまうのだが、形而下的な物に対する現実感はない。あくまで著者を取り巻くのはブランド、信頼という記号である。ワニ革で、縫い方がどうで、大きさがこれくらいとディテールを詳細に記述すればするほど、あらゆる物がより綿密に記号化されていく。
ボードリヤールはこの世界について「現実原則が支配していた世界では、空想は実在のアリバイだった。ところが今日、シュミレーション原則が支配する宇宙で、モデルのアリバイと化したのは他ならぬ実在だ」と述べる。
田中康男の『何となくクリスタル』の頃までは、訳の分からないブランド商品でも実際に使う人間ドラマが分かりやすかったが、今回の中村うさぎは現実感の薄い人間模様に加えて記号が入ってくるので……。
扁桃腺が腫れて、鼻も出て来たので薬を飲んだら頭がぼーっとしてきた。このへんで。