投稿者「heavysnow」のアーカイブ

『漢字のはなし』

阿辻哲次『漢字のはなし』(岩波ジュニア新書 2003)を読む。
甲骨文字から漢字の成り立ちまで分かりやすく説明している。しかし現代の漢字事情などは紙幅の関係か尻すぼみに終わってしまっている。その中で「卍」の字についての解説が興味深かった。

卍はインドで作られた、仏教に関することを表す記号です。もともとインドの原始宗教では太陽神ヴィシヌ神の胸にあった胸毛の形をかたどったもので、瑞兆の相とされました。これはやがて仏教に入り、菩薩の胸や手足に現れた慈悲深い心を表す吉祥と考えられました。卍をサンスクリット語ではスヴァスティカといい、中国語ではそれを「吉祥万徳」と訳しています。遼の『龍龕手鏡』に、「卍は音万、是れ如来の身に文有るなり」とあります。卍の音が「万」とされているのは、もともと表していた「吉祥万徳」の「万」に由来するもので、これが、日本でこの字を「まんじ」と読む理由です。

『ゼロからスタート! 経済学超入門』

経済セミナー編集部『ゼロからスタート! 経済学超入門』(日本評論社 2000)を読む。
大学1年生もしくは2年生を対象にし、ミクロ経済、マクロ経済、需給曲線等、マンガを用いながら楽しく紹介しようというものだ。
しかし新古典派経済学とケインズの比較を日本昔話調にアレンジしたり、計量経済学をゼミのコンパの計画になぞらえたりと変に大学生におもねようとするあまり、かえって分かりにくい説明になってしまっているのが残念だ。

『マンガ剣道教科書シリーズ 基本編』

少年剣道新聞社『マンガ剣道教科書シリーズ 基本編』(少年剣道社 1994)を読む。
小学生向けの本であるが、「剣道は手で打つな!足で打て!」という作中人物のセリフが印象に残った。
柔道でも空手、拳法、合気道でも同じであるが、柔道は決して力で投げるものではなく、また空手は拳だけで相手を制するのではない。あらゆる日本の武道の基本は腰の使い方と重心の安定である。腰にためをつくりつつ、腰の回転で力を生み出しながら、一方で腰の力を抜いて自分の身体を十二分に用いるといった武道の神髄に思いを馳せた。

どんよりした活気

今日は実家近くにある歯医者へ出掛けた。電車で2時間以上もあるが、途中久しぶりに神保町界隈を少し歩いてきた。靖国通り沿いの三省堂や書泉グランデあたりの光景は数年前とあまり変わらず、いつも通りの「どんよりした活気」が渦巻いていた!(笑)
途中の電車の中で、小学生が「戦争っ、軍艦軍艦朝鮮、朝鮮朝鮮ハーワイ、ハワイハワイ軍艦」と亜流ジャンケンを行っている光景を目にした。おそらくは第二次大戦中に流行ったものかと思われるが、あまりに露骨な遊びである。小学生が無自覚に「戦争」や「軍艦朝鮮」と口にしている姿には自衛隊派遣とあいまって不気味な雰囲気を感じてしまう。

『号令のない学校』

佐藤真知子『号令のない学校』(学陽書房 1989)を読む。
オーストラリアの自由な個性尊重の学校を紹介しながら、日本の学校の不自由さを批判するといったありきたりな内容である。
確かに日本の学校のいじめや不登校、転校の難しさなど風通りの悪さは指摘の通りだが、オーストラリアの学校に対する無批判な礼賛には頷きかねる。オーストラリアの豊富な資源、そしてそれゆえの裕福な社会環境、またアボリジニーに対する差別などオーストラリア社会全体を考慮にいれていかねばならない。教育環境は否が応でも国の思惑の影響が大きい分野である。常に教室と学校、そして学校と地域、そして国家との関係から論じていかねば危うい方向へ議論が進んでしまう。