『漢字のはなし』

阿辻哲次『漢字のはなし』(岩波ジュニア新書 2003)を読む。
甲骨文字から漢字の成り立ちまで分かりやすく説明している。しかし現代の漢字事情などは紙幅の関係か尻すぼみに終わってしまっている。その中で「卍」の字についての解説が興味深かった。

卍はインドで作られた、仏教に関することを表す記号です。もともとインドの原始宗教では太陽神ヴィシヌ神の胸にあった胸毛の形をかたどったもので、瑞兆の相とされました。これはやがて仏教に入り、菩薩の胸や手足に現れた慈悲深い心を表す吉祥と考えられました。卍をサンスクリット語ではスヴァスティカといい、中国語ではそれを「吉祥万徳」と訳しています。遼の『龍龕手鏡』に、「卍は音万、是れ如来の身に文有るなり」とあります。卍の音が「万」とされているのは、もともと表していた「吉祥万徳」の「万」に由来するもので、これが、日本でこの字を「まんじ」と読む理由です。

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