投稿者「heavysnow」のアーカイブ

『ベーシック/外国為替入門』

日本経済新聞社編『ベーシック/外国為替入門』(日本経済新聞社 1994)を読む。
まだ個人のデイトレーダーが今ほどいなかった頃に出版された本であり、公定歩合や経済指標、企業業績を分析し、さらに政治情勢や軍事情勢、資源・エネルギー状況など国際政治・経済を総合的に見る力が為替の動向を探る上で必要であると述べる。先日来、ネットで、素人トレーダーの取引動向のブログやスワップ金利だけで生活するなどの話にずっと目を通していたので、このようなまともな経済のテキストが新鮮に感じる。

ファンダメンタルズは一般に、一国の経済、通貨の健全性を示す基礎的な指標だとされています。代表的なものとしてあげられるのは、貿易収支、経常収支、インフレ率、生産性上昇率です。為替相場はその国の財やサービスの国際競争力を敏感に反映します。
(中略)現在の為替相場は、いわゆる「実需原則」の規制を外しているため、市場参加者が相場の先行きを見越して投機的な為替売買をするケースも増えています。それでも経済的な要因、中でもファンダメンタルズは相場を左右する主要な条件であることは言うまでもありません。外為市場がファンダメンタルズをどうみるかが、重要な決定要因となります。

『経済ってそういうことだったのか会議』

佐藤雅彦竹中平蔵『経済ってそういうことだったのか会議』(日本経済新聞社 2000)を読む。
まだ小泉内閣に入る前の「経済戦略会議」や「IT戦略会議」に名前を連ねていた慶大教授の頃の竹中氏が、経済学に偏見を持つ佐藤氏の批判に丁寧に応えつつ、これからの日本の経済学のあり方を指し示す内容となっている。佐藤氏の子どもの頃に流行った牛乳瓶のフタから貨幣や信用の話に展開していき、そして、東インド会社から株式の仕組みを説明し、税金やアメリカ経済、アジア経済、投資と消費、企業とビジネス、労働と失業など経済を巡る様々な問題に議論が広がっていく。佐藤氏が経済学を人間の欲望を助長していく危険なものではないかと危惧するのに対し、エコノミクスには元来ギリシャ語のオイコノミクス”共同体のあり方”という意味があり、経済学は社会の発展と幸福を希求するものであると竹中氏は述べる。確かに、竹中氏の経済学の概論の説明は非常に分かりやすく示唆に富んでおり面白い。しかし、中曽根内閣の民営化・自由化・国際化を賛美し、企業や個人の自己責任を重んじ、人頭税の導入や競争原理を徹底する強者の論理を振りかざす姿勢は当時から変わらない。

その中で、竹中氏の株式会社の説明の一説が興味深かった。会社が誰のものか分からないから一般の社員は自分のものだと思って働くというのは極めて日本的な感覚であろう。日本では、スポーツの世界でも公務員の世界でも誰かが一元的に管理支配している構造とはなっていない。好々爺の社長であったり、温厚な監督、存在感のない所長などが日本の組織のトップに鎮座することが多い。そうした日本の組織のメリット・デメリットをきちんと見極めていきたいと最近ふと考えることがある。

(日本では「わが社」という言葉に表わされる通り、株式会社が株主のものではなく、コーポレートガバナンスが機能していないという話の流れで)
会社が自分の会社であると思うその一つの大きな要因は、オーナーが見えなかったからだという説です。もし、これがたとえばオーナーがちゃんといる会社で、「この会社はあの人のものだ」というふうに思ったら、いくら会社で働いているサラリーマンでも、やはり自分の会社とは思えないですよ。日本はさっき言ったように会社同士が株主でしょ。株主が見えないような仕組みで株式を持ち合ってますから、オーナーというコンセプトがないんですよね。そうすると会社っていうのは誰のものかわからない。誰のものかわからないから、自分のものみたいな気がして一生懸命働くと。

『FXで月100万円儲ける私の方法』

鳥居万友美『FXで月100万円儲ける私の方法』(ダイヤモンド社 2007)を読む。
バブル時代に暗躍した一夜成金の株長者が書いたような中身の薄い本である。額に汗水垂らして働くことを根本から否定してかかるような発言もあり、読んでいて腹が立つ。労働の対価として金を手に入れるのではなく、商品としての金をただネット上の画面の中で転がすだけで金を手に入れるのである。牛骨粉を食べさせられて自然の摂理を越えて太らされる肉牛の哀れで厭らしいイメージがよぎる。以下は著者が主宰するFX仲間の発言である。

たとえば宝くじで当たって大金を得たとしても、使っているだけではいずれなくなってしまうし常に減っていく不安につきまとわれます。それに対して、FXで稼ぐ方法を身に付ければ、自分でお金を生み出すことができるようになります。「お金」を求めるのではなくて、「お金を生み出す力」を手に入れる。そうすれば、とにかく自由になれると思います。別に生活を変える必要もなく、それまでと同じままで、自由になれ、心に余裕ができて、人にも優しくなれる。最初の一歩を踏み出す勇気があれば、周りの景色ががらっと変わるかもしれないんです。

『高校生のための経済学入門』

小塩隆士『高校生のための経済学入門』(ちくま新書 2002)を読む。
タイトル通り「政治・経済」を勉強する高校生や、経済学部を志望する受験生、また経済をもう一度学びたいと考える社会人に、つまらない経済用語の暗記ではなく、現実の動きに則した使える経済学を分かりやすく解説する。お小遣いの使い方を例にした需要−供給曲線の基礎から始まり、市場メカニズムや政府・日銀の役割、経済成長の仕組みなど丁寧に説明されている。これまで公定歩合が日銀の金融調整の要だと思っていたが、無担保コールレート翌日物が政策金利へと取って代わられていた背景などがよく分かった。新聞の経済欄を読むための基礎知識が得られる良書である。しかし、今の平均的な高校生にはちょっと難しめか。

『おそるおそるFXをやってみた』

中村美佐子『おそるおそるFXをやってみた』(文芸社 2007)をさらっと読む。
耳慣れない言葉だが、FX(外国為替証拠金取引)とは、掛け金の数パーセントほどの少ない金額(証拠金)を担保に多額の為替取引がネット上で可能となる仕組みである。会社によっては10万円で1000万円もの取引が可能となるギャンブル性の強い財テクである。1ドル1円円安に振れるだけで、10万ドルの取引があれば、10万円の儲けが生じる。逆に一時間で10万円の損失が生じる可能性もあるのだ。また、現在の日本円と外国の通貨の金利差を利用して毎日利息がつくスワップという仕組みがあり、10万ドル預ければ、一日につき1500円近くも利息が振り込まれる。
本を読むだけだと、これ以上うまい話はないように聞こえる。確かにハイリターンであるが、ハイリスクな商品であるということを忘れてはならない。