『教員になりたい人:採用から給与・仕事・生活・教育問題まで』

教育研究会『教員になりたい人』(ダイヤモンド社 1996)を読む。
もしかしたら来年入ることになるかもしれない教職員住宅について触れて合ったので、古い本であるが手に取って見た。
タイトル通り、採用試験、初任者研修に始まり、給料や各種手当、住宅、休暇、さらに、定年、再就職に至るまでの公立学校教員の一生のモデルプランが分かりやすく説明されている。公務員の待遇の良さをしきりにアピールしているが、授業や担任業務の雑務に追われ、家と職場の往復しかないしがないサラリーマン教師ばかりが取り上げられている。公立学校教員という井の中に収まりたい人にはよいが、それ以上に教育の本質を追求したいと考えている者にはいささか熱意が削がれる内容となっている。

実習の前半が終了

本日で実習の前半が終了した。

巡回指導員の巡回指導内容

2005年11月30日
巡回指導員 日本社会事業大学通信教育科 澤伊三男

  • 実習生は施設にとって,新しい視点を運んでくれる存在である。職員との情報交換にも時間を使ったほうが良い。しかし,単なる批判やサービスの不備を指摘するのは建設的ではない。養護学校教員という福祉とは異なった視点を大切にし,具体的な提案を職員にするぐらいの気構えを持ってほしい。
  • 5W1H(いつ,どの場面で,だれが,だれを,なぜ,どのような対応をしたのか)を意識し,具体的にノートにまとめておくと,後々貴重な資料となる。
    →単に「場面によって切り替える」とか「柔軟な体制」など,抽象的な表現でなく,具体的に記載すること。
  • 読む側に誤解を与えないよう,用語の使い方には注意を払うこと。
    →ケースワークとソーシャルワークの違い
  • 利用者に対する応対が基本であるが,それだけで終わることのないように。あらき園への入所,あらき園からの退所など進路の問題に目を向けると実習の意義が深まる。
  • 養護学校高等部と施設や作業所との連携は,古くて新しい課題である。一人の利用者をトータルにサポートしていくための連携作りが提唱されて久しいが,学校教員と施設職員が反目し合い,連絡すらもとれていないのが現状である。そのような現状を打破するためにも所期の目標である,養護学校の進路指導のための課題発見というテーマをさらに深めていってもらいたい。

『自閉症の子どもたち』

酒木保『自閉症の子どもたち:心は本当の閉ざされているのか』(PHP新書 2001)を読む。
現在実習に行っている知的障害者更生施設の利用者の方への関わりのヒントになればと手に取ってみた。著者は自閉症を身体意識や空間認識、また、時間の感覚の「認知」に関する異常と定義づける。自閉症児は、自分と他人との違いがうまく区分できず、自分以外の人や物が自分だと思い込んでしまうことがある。その結果、「○○ちゃん(自分)に食べさせて」と言ったり、「ここ」「そこ」「あそこ」という指示代名詞がうまく使えないなど、他者との関係性における齟齬が生じる。

そこで、自閉症児は認知できない不安な外界から自分を守るために、自分をコップと思い込むなどといった「自我防衛機制」を働かせる。そのような「自我防衛」を「箱庭療法」や「遊戯療法」で徐々に変えていくことで、他者と関わる力を少しでもつけていく著者自身の手による療法が分かりやすく紹介されている。他の物に癒着した症児の主体を引き出す治療など、まるでエヴァンゲリオン初号機に心を囚われた碇シンジ君の話を聞くようなSFチックなものとなっている。

最後に著者は次の言葉でまとめている。現在の私自身の実習のテーマと重なっているため印象に残る言葉である。

自閉症について知りたいと思ったらオススメの一冊である。

自閉症児にとって本当に必要なのは、「いま」「ここ」に自分が存在することについて抱いている不安や恐怖を克服すること、安心して生き、生きようとする力を彼ら自身が手にするための援助です。そのために、人間と人間とが関わり合って生きていくということは快い体験なのだということを彼らが感じ取ることができる環境をつくっていかなくてはなりません。(中略)大切なことは、日本でとかく見られがちな、他職種間に見られる線引きや、縄張り意識を捨てさり、自閉症児の視点にたって物事を考えていくことです。自閉症児の治療においては「適切さ」と「一貫性」と「継続性」という三つの要素がすべて揃って、初めて効果があがります。そのためには、親だけでなく、治療、教育、福祉の統合的体制を整えることが重要であると強調したいと思います。

『経験を盗め』

糸井重里『経験を盗め』(中公公論新社 2002)を読む。
祭りや風邪、異文化に始まり、骨董やゲイ、はたまたおやじギャグやおしゃれなど多岐に亙るテーマで、各界で活躍する人たちに糸井氏が切り込んでいく対談集である。これまで数々の対談集を読んできたが、これほど幅広いテーマを網羅したものは読んだことがない。亀も20年も飼うと人間に甘えてくるという珍話やダジャレは男性の専売特許であるなど興味深い話も多かった。

『TAKESHIS’』

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新都心へ北野武監督・主演『TAKESHIS’』(2005 松竹)を観に行った。
二枚目の映画俳優として大活躍するたけしと、映画の脇役オーディションに落ち続け、アルバイト生活に明け暮れるアナザーたけしの二人の過去と夢が交錯する不可思議な映画である。お笑いのリーダーとしてマスコミによって作り上げられたピエロ役の「ビートたけし」に違和感を持つ内面の北野武が、過去の思い出であるタクシー運転手時代や映画「HANA-BI」のストーリーに迷い込む荒唐無稽な展開となっている。ふと10年以上前の浪人生時代に読んだ、筒井康隆の「夢の木坂分岐点」という夢の世界を描いた破天荒な小説を思い出した。「世界のタケシ」が作った映画だということで、色々と深読みをしてしまうが、評価は大きく分かれるであろう。