『男たちの大和』

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中村獅童・反町隆史主演、佐藤純彌監督『男たちの大和』(2005 東映)を観に行った。
60年前の太平洋戦争末期に、一億総玉砕の尖兵として無残な最期を遂げた戦艦大和の乗組員の生き様、死に様を鮮やかにスクリーンに蘇らせている。激烈な戦闘シーンが続き、戦争の悲惨さが迫力をもって十分に伝わってくる。中村獅童の演技にも鬼気迫るものがあった。
一方で、当時の戦争を日本人の視点でしか捉えておらず、ともすれば米軍に勇敢に立ち向かった英霊を賛美するような解釈を許している。作品中では国家犯罪の犠牲者となった大和乗組員の無念な青春がテーマとなっているのだが、エンディングで長渕剛が突然「それでもこの国を たまらなく愛しているから もう1度生まれ変わったら 私の名を呼んで下さい」と歌い出し、作品の世界観を思いっきりぶち壊してしまう。

ネットで調べたところ、エンディングの最後には「多くの方達が命を懸けて守った日本に、今私達は立っている」とのクレジットが入る予定だったが、諸々の事情によりカットされてしまったそうだ。10代、20代の若い人が改めて戦争の悲惨さを知るという意義を考えると、戦争国家を肯定するような意味付けは不要である。

『千里眼』

松岡圭祐『千里眼』(小学館 1999)を一気に読んでしまった。
前作『催眠』に続く心理学をモチーフにした冒険活劇小説である。航空自衛隊F15パイロットを経て臨床心理のカウンセラーとなった女性が、国家転覆を図るカルト宗教団体との派手な立ち回りを演じる。後半は、教組に脳を改造された信者との格闘やら羽田空港管制塔に偽装電波を送信する巨大観音像、お台場上空での自衛隊戦闘機による追撃など、ヤン・デ・ボン監督の『スピード』を観ているようなスリル感あふれるアクションが展開される。話の辻褄が後半ほつれてくるが、それを補っても余りあるスピード感がこの著者の売りである。

『THE有頂天ホテル』

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今日は埼玉でも朝から雪が降り、都心では5年ぶりの積雪を記録したという。今冬は日本海側の豪雪のニュース映像を見慣れたせいか、東京の降雪の映像を見ても危機感はまるで感じない。
夜になって雪が止んだので、さいたま新都心へ三谷幸喜監督『THE有頂天ホテル』(2005 東宝)を観に行った。
大晦日の大ホテルを舞台にした作品で、年越しのカウントダウンに向けて、豪華キャストによるドタバタ劇が展開される。長回しのパン映像が多く、観客も同じホテルの宿泊客になって年末の慌ただしさに振り回される感覚に捉われる。出演者それぞれが一年間自分の思い通りに生きられなかったストレスを抱えホテルにやってきたのだが、ラストのホテルの年越しパーティを契機に全員が笑顔を取り戻していくさまは観ていて爽快感が伴う。あれだけの出演者がいながら、皆が皆主役になってしまう演出・構成方法はさすがである。

鳥取大学付属養護学校の専攻科開設

今日の東京新聞夕刊に、鳥取大学付属養護学校の専攻科開設の報道が載っていた。
知的障害や発達障害のある人が社会生活に適応し、自立して生活する力を養うのが目的で、国公立では全国初ということだ。記事によると、専攻科は二年間で、家事や家計の管理などを教え、働く際に役立つようなホームヘルパー二級や自動車運転免許などの資格取得を支援する。また、在学中に成人する学生のため、年金の管理や参政権の行使、福祉事務所の公的機関の利用方法を教え、鳥取大の学生との交流や共同学習も進めるという。ホームページを見ると、募集は3人だけで、まだまだ試験的な段階のようだ。とかく教育と福祉の連携体制の不備が指摘されているが、このような取り組みを皮切りに、真に「開かれた学校」のモデルが広く普及することを望みたい。国立大学付属学校にありがちな内輪でこぢんまりまとまる悪弊だけは広まってほしくないものである。

『30 歳から本気ではじめる大人の勉強法』

西山昭彦『30 歳から本気ではじめる大人の勉強法』(中経出版 1998)を読む。
押入れ書斎やパソコン利用など独学での取り組みのコツや、社外での勉強、社会人大学院など、大人の勉強方法について、経験を交えて分かりやすく解説されている。
「キャリアは自分でつくる時代になった!」と指摘するように、著者には既に会社共同体への幻想はない。会社内における「勝ち組」「負け組」の競争は自明のものであり、その競争に勝ち抜くために勉強が大切だと説く。
著者は勉強の習慣を作るポイントして次の項目を挙げている。

勉強する”形”を作るための6箇条

  • 目標が高すぎると挫折する!
  • 短時間でも集中して勉強する!
  • 期限を明記する!
  • 八割分かれば先に進む!
  • 気分転換を適当に図る!
  • 学んだことを発表する場を持つ!