スティーブンソン『ジーキル博士とハイド氏』(新潮文庫)を読んだ。
作家中島敦氏がスティーブンソンの生活を描いた作品を発表しているが、まさに虎に変身してしまう『山月記』の原型のような作品。善人で通っているジーキル博士の心の奥底に眠る悪心がハイド氏となって具現化されてしまうのだが、後半部はそのジーキル博士がまだ自身の心を有しているときに、友人宛に書いた手紙を公開するという展開になっている。ジーキル博士の自身の心をコントロール出来ないという告白は、いくら仕事や名声が高まっても、その主体たる自己が確立されなければならないといった教育論として読むことも出来る。
『ジーキル博士とハイド氏』
コメントを残す