近年,社会福祉が計画的に推進されている。例えば1990年の「老人福祉法等の一部を改正する法律」により都道府県および市町村に老人福祉保健計画の策定が義務づけられている。また,「介護保険法」においては市町村に介護保険事業計画が,さらに「社会福祉法」の改正に伴って都道府県に地域福祉支援計画の策定が義務づけられている。地方分権の流れに伴い,地方・地域レベルで責任ある財政支出の裏付けとなる計画作成が求められている。
これらの地方の福祉計画の基本となっている国レベルの主な計画として「ゴールドプラン21」「子ども・子育て応援プラン」「新障害者プラン」の3つが挙げられる。
「ゴールドプラン21」は,2000年に作成され高齢者福祉全般の枠組みを決めたものである。高齢者が健康で生きがいをもって社会参加できる環境づくり,在宅福祉を基本とし介護サービスの量と質の両面にわたる整備と高齢者の尊厳の確保と自立支援,高齢者の生活全般を支援していくための,住民が相互に支え合う地域社会の形成,「利用者本位」の仕組みを基本とした利用者から信頼される介護サービスの確立の4つを基本目標としている。
「子ども・子育て応援プラン」は2004年に作成され,少子化のみならず,若者が安心と喜びをもって子育てにあたっていくことを社会全体で応援する仕組みを作ろうとするものである。若者の自立とたくましい子どもの育ち,仕事と家庭の両立支援と働き方の見直し,生命の大切さ,家庭の役割等についての理解,子育ての新たな支え合いと連帯の4つを基本目標として掲げている。若者の就労意識の確立や子どもの体験活動に始まり,育児休業制度,男性の子育て参加,子育てがしやすいワークシェアリング,就学前の教育・保育の充実など厚労省,文科省の省庁の垣根を完全に越えた施策が展開されている。
「新障害者プラン」はライフステージの全ての段階において全人間的復権を目指すリハビリテーションの理念と,障害者が障害のない者と同等に生活し,活動する社会を目指すノーマライゼーションの理念の実現に向けて,2002年に作成された。社会参加する力の向上,地域基盤の整備,地域での共生,アジア太平洋地域における協力の強化,国民理解の向上,教育機関との一貫した相談支援体制の整備,雇用・就業の確保の7つの基本目標を掲げている。
これらの計画は高齢者,障害者,育児といった自己責任のみに委ねることが難しい問題に関して,国レベルで自己実現と社会的公正のバランスが取れた社会形成に向け,数値目標を掲げ行動を期すものである。しかし,近年の財政難から計画の達成が先延ばしになっている。数値を挙げたにも関わらず,計画自体が流れては意味をなさない。国家全体のグランドデザインであるが,国民一人一人がそれぞれの階層において実現を目指さねばならないものである。
参考文献
一番ヶ瀬康子監『教科書社会福祉』一橋出版,1997年
西村昇編『社会福祉概論』中央法規,2001年