『龍安寺石庭を推理する』

夏の3冊目
宮元健次『龍安寺石庭を推理する』(集英社新書 2001)を読む。
造営年代も作者も、また造形の意図すら明らかでない、京都の金閣寺の近くにある龍安寺の石庭の謎に迫る。膨大な史料を駆使して、龍安寺の成立年代や作者についての仮説を一つ一つ潰していき、最終的には江戸時代初期に造営され、西洋的建築手法を学んだ小堀遠州なる人物が、遠近法や黄金比などのキリシタン建築様式を取り入れ奥深い禅宗的世界観を構築したものだとする大胆な結論を述べる。著者30代の時の作品であり、東京芸大大学院で美術研究を専門としながら、古書文献を読みこなす力には脱帽である。
私もちょうどこの3月に龍安寺を訪れたばかりである。確か、入口で貰った石庭のパンフレットの解説には、長い時間目を凝らして見ているとひらめきや悟りを得ると言った禅問答のような言葉が書かれていたように記憶する。しかし、あの石庭は、何やら不思議故にありがたいといった禅の教えとは無関係に、当時の建築技術の粋が込められた庭園建築物として「素直」に見なければならないのであろう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください