中島敦記念賞受賞作、酒見賢一『墨攻』(新潮文庫 1994)を読む。
諸子百家の一つで「兼愛」「非攻」を唱えた墨家を題材とした歴史小説である。墨家は文献もあまり残っていないので、漢文でもあまり取り上げられることのない思想家である。私は勝手に、「兼愛・非攻」という言葉のイメージからジョン・レノンのような人間愛的な教えを唱える集団だと捉えていた。しかし、作者酒見氏は、徹底した規律と技術によって城を守る専守防衛の戦闘集団と考え、とある小さな城の攻防を描き出している。読みやすい文体と分量の小説であったが、場面場面が印象に残る作品であった。
『墨攻』
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