「氷河解け…半世紀ぶりに砂漠に湖が出現」

本日の東京新聞朝刊に、チベット高原の氷河が解けて、チベットから流れ出す河川の流量に大きな変化が生じているとのこと。

チベット高原は、約2,000万年前にユーラシアプレートにインド大陸がぶつかってできた、世界で最も若い褶曲山脈である。日本の面積の6倍近くの広さがあり、平均海抜は4000メートルを優に超える。南縁は平均海抜6000メートル前後となる、中国やインド、パキスタンの国境未確定地域にほど近いカラコルム山脈や、中国とネパールの国境となっているヒマラヤ山脈となっている。インド大陸はユーラシアプレートとぶつかった後も動きを止めず、大陸の間にあった深海の底を9000メートル近く持ち上げたことになる。ヒマラヤ山脈は今でも、年間10mmという驚異的なスピードで成長を続けている。

また、チベット高原は、高原に蓄えられた万年雪や氷河が徐々に解け出すことによって、中国を流れる黄河や長江、東南アジアを流れるメコン川、インドを流れるガンジス川、ミャンマーを流れるエーヤワディー川、パキスタンを流れるインダス川の源流ともなっている。特にパキスタンは乾燥地帯であり、外来河川となるインダス川の豊富な水で古代文明を築いてきた。パキスタンはインダス川の水で米も小麦も生産することができているので、現在人口2億2000万人いるにも関わらず、食料自給率が100%を超えている。

しかし、温暖化によってチベット高原の氷河が一気に融解してしまった場合、大規模な洪水を引き起こすだけでなく、その後の水の慢性的な供給不足に陥ってしまう。稲作にとっては大ダメージである。そうなると、パキスタンだけでなく、人口14億人の中国、インドシナ半島のラオス、タイ、ベトナム、カンボジア、数年後には人口世界第1位となるインドの農業も壊滅である。

地球温暖化というと、南極大陸の氷河が解けて、海面が上昇し、ツバルやキリバス、モルディブなどの環礁の島々が海に沈んでしまうというのは中学校でも学習するところである。しかし、山岳氷河の融解は、地球の人口の半数をしめる5つの河川の沿岸国を死に追いやる。こうしたチベとを中心においた水問題にも注目していきたい。

ちなみに氷は「溶ける」ものだと思っていたが、新聞記事では「解ける」であった。
ネットで調べてみたところ、自然現象で暖かくて氷が自然にとけ出して水になってしまうような場合は「解ける」を用い、人為的行為でお湯やバーナーなどで急速に氷をとかすような場合は「溶かす」を用いる。つまり、「解く」は自動詞として、「溶く」は他動詞として用いるという決まりがあるとのこと。