『暮らしのなかの第三世界』

北沢洋子『暮らしの中の第三世界:飽食と繁栄VS飢えと貧困』(聖文社 1989)を読む。
現在では「第三世界」という用語は死語になっており、「グローバルサウス」という語が使われている。インドやブラジル、タイ、南アフリカのような、南半球に位置するアジアやアフリカ、中南米地域の新興国・途上国の総称であり、執筆当時の1990年当時、世界経済(名目GDP)に占める先進国のシェアは80%、途上国は20%だった。しかし、2020年には先進国60%、途上国40%になっている。

現代史の本という感じで読んだ。コロンブスがカリブ海にやってきた翌年の1493年には、エスパニョーラ島で砂糖生産が始まっている。カリブ海の温暖な気候と豊富な雨量が砂糖キビの生産に適していた。16世紀にはこの島の工場は200を数えるようになり、年産1600トンの粗糖がヨーロッパに運び込まれた。当時のヨーロッパは砂糖は金銀・真珠なみの貴重品として扱われていた。
最初はヨーロッパからの移民労働が中心だった。原住民のインディオは抵抗したのでほとんど殺してしまったからである。やがて白人労働者だけでは間に合わなくなり、アフリカから黒人を連行して使役するという方法を考えついた。こうして奴隷貿易が始まった。
18世紀には砂糖は世界貿易の最大品目となった。これは19世紀の鉄鋼、20世紀の石油に相当する。

広葉樹林は落葉が土壌を肥やし治水に役立っているが、針葉樹林にはこのような効果がない点も問題である。

特にユニリーバのアフリカ侵略に関する項が興味深かった。ユニリーバは世界で最も古い、最も大きい石鹸とマーガリンの多国籍企業である。日本でも食品の「リプトン」や「クノール」化粧品の「LUX(ラックス)」や「Dove(ダブ)」「モッズ・ヘア」、洗剤の「ジフ」「ドメスト」など多数のブランドを展開している。このユニリーバ社はコンゴでベルギーの雇い兵を使って、住民の生活や環境を破壊してパームやしのプランテーションを拡大してきた。またマーガリンも落花生をからとれる植物油を原料とするため、フランス領セネガルでコンゴと同様の強制を行なっている。