『金融屋』

笠虎崇『金融屋:借金漬けにされる消費者たち』(彩図社 2007)を読む。
著者は埼玉県立川越高校から中央大学法学部を卒業し、大手消費者金融アイフルに就職し、不動産部門担保ローン部でトップセールスマンとなった。退職後、4ヵ月、アジアを放浪。帰国後、編集・ライター・カメラマンに転身した異色の経歴の持ち主である。

大手消費者金融といえど、貸付にあたっては銀行からお金を低率で借りて、返済能力や計画を審査し、金利や経費を上乗せして消費者に貸すという仕組みは変わらない。多くの銀行はバブル期に右肩上がりだった不動産を担保として貸付をしたために、バブルがはじけ、一気に回収不能な不良債権となり経営を圧迫した。その反省をいかし、サラ金業社の多くは回収不能の危険がありながらも無担保ローンを中心にしてきたという経緯がある。

著者は大卒の大手に勤務しているが、街金業社とのやりとりが興味深かった。大手はネットで申し込み、銀行振込など対面でのやりとりがどんどん減っている。一方、街金業社は対面返済にこだわり、客との会話や客の細かい様子の変化からアドバイスを行なっているという。
サラ金だけでなく、医療や教育にも通じる話かもしれない。

貸した客はちゃんと最後まで面倒をみなければいけない。そのためにはな、対面返済をさせなければダメなんだ。
昔ながらの街金にはな、人情があったものだ。客がこれ以上借金を背負わないで、きちんと返せるように、顔を突き合わせるたびに励ましたり、怒ったりしてな、客もそれを恩義に感じてきっちり返しにきたものだよ。今考えると、それはカウンセリングかもしれないな。