「渡り鳥 地球をゆく』

長谷川博『渡り鳥 地球をゆく:キセキレイ・ハクチョウ・アホウドリ』(岩波ジュニア新書 1990)をパラパラと読む。干潟に生息するキセキレイや、シベリアから飛来するハクチョウ、鳥島と尖閣列島にしか生息していないアホウドリの研究にかける思いが綴られている。本文の趣旨とは違うのだが、北極圏のツンドラに関する記述が面白かった。

ツンドラ気候の定義は、夏のあいだの最暖月の温度が10度以下ということです。0度以下だと氷雪気候というのです。ツンドラでは、夏のあいだは表層の雪が溶けますから、表層にはコケなどが生えたり、草が生えます。川辺にはごくわずか低木も生えます。それでも地表から約30センチより下は凍っています。永久凍土層です。むかし、ツンドラの地下の永久凍土層から、マンモスの赤ちゃんの死骸が発掘されたことがありましたね。凍りっぱなしなので、ほとんどそのままで保存されていたのです。
それより暖かいところだと、樹木が生えるようになります。タイガに入るのです。しかし、ツンドラでも、氷雪気候とはぜんぜん違って、生き物はわりに豊富です。生物というのは、生きる条件の少しでもあるところには、必ず適応して進出している。それはけなげでもあり、たくましくもありますね。