本日の東京新聞夕刊に、イランの女性人権活動家のモハンマディさんがノーベル平和賞を受賞した記事が掲載されていた。イラン政府がイスラム教の教義を利用して人権侵害や表現の自由を奪っているというノーベル賞委員会の見解と、ノーベル平和賞の政治利用であり、欧米によるイスラム教への冒涜だとするイラン政府の批判が渦巻く受賞となっているようだ。
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『生と死をみすえて』
吉武輝子『生と死をみすえて:娘あずさへの手紙』(岩波書店 1996)を読む。
娘のあずささんとは、東京新聞で長年コラムを担当されている宮古あずささんである。
著者の吉武さんは、評論家樋口恵子とともに「土井たか子を支える会」を結成し、女性の地位の確立を目指した社会運動家でもある。その彼女がこれまで自分が取り組んできた、考えてきた問題について、娘に手紙の形で伝えるという構成となっている。読みやすい文章であった。
『写真美術館へようこそ』
飯沢耕太郎『写真美術館へようこそ』(講談社現代新書 1996)をパラパラと読む。
写真という感性に直接訴える芸術作品に小難しい解説がこれでもかと加えられる。
福田村事件 慰霊碑と現場訪問
『「アラブの春」の正体』
重信メイ『「アラブの春」の正体:欧米とメディアに踊らされた民主化革命』(角川Oneテーマ21 2012)を読む。
著者は1973年、レバノン・ベイルート生まれで、日本赤軍のリーダー重信房子の娘である。タイトルにある通り、「アラブの春」が欧米の勢力やメディアによって、欧米型の議会制民主主義や欧米のエネルギー企業の進出を利するような形に変容された実情について、西アジアや北アフリカの国の紹介も含めて、国ごとに異なる個別事情が丁寧に説明されている。
確かにチュニジアやエジプトでは、民衆の反政府運動が、腐敗にまみれた独裁政権を倒す原動力となった。しかし、リビアでは、メディアの力で原油や天然ガスを独占するカダフィ大佐をことさら悪人に仕立て上げて、フランスやアメリカの軍隊が反政府運動に肩入れし、形だけ民主主義の、欧米の都合の良い独裁政権が誕生しただけであった。シリアやレバノンでも、アラブの春が、アメリカが与しやすい、イランを排除しイスラエルに近い政権作りに使われてきたのが実情である。
他にも、カタールの国営放送のアルジャジーラの課題やエルドアン大統領以降のトルコの立ち位置など、アラブ地域を見る視座の参考になる話が多かった。
クルド人はイラク、トルコ、シリア、イランにまたがって住んでいますが、自分たちの国は持っていません。それぞれの国で独立を訴えて反政府運動をやっています。
イラクの場合、クルド人が自治政府を作っているのは石油が出るイラク北部です。したがって、クルド人に独立されてしまうと石油の採掘権を取られてしまうので、イラク全体にとっては不都合です。
トルコでも同じような事情があり、クルド人が住む土地は水資源があることで知られています。そのため、トルコもクルド人の独立を許すわけにはいきません。また、同じようにシリアのクルド人が住む地域はシリア国内でも農作に適した北シリアで、そこを取られるわけにはいかないのです。イランも石油が出る地域にクルド人のコミュニティがあります。どこの国でも、クルド人は人口が多く、重要な土地にクルド人が住んでいるので、独立させるわけにはいかないのです。
クルド人はそれぞれの国で、独立運動や反政府運動を行っています。そこで新たな矛盾が起こります。イランとイラクは、イラク戦争前までは戦争するような緊張関係にありましたが、イランはイラク国内のクルド人の運動を支援し、イラクはイラン国内のクルド人の運動を支援していました。それぞれ、敵の敵は味方という関係にあったわけです。それと同じようなことがシリアとトルコの間でも起こりました。
クルド問題は、クルド人自身の独立への切実な思いとは無関係に、その国の政情を不安定にさせるための道具として使われてきた歴史があるのです。