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『時雨の記』

中里恒子『時雨の記』(文春文庫 1981)を読む。
作者の中里さんは、日本初の女性で芥川賞を受賞しており、横光利一や川端康成とも親交のあったとのことで、国語便覧で紹介されていそうな作家である。

1977年に刊行された本の文庫化である。50を過ぎた会社経営の既婚男性と夫を亡くし片田舎でひっそりと寡婦生活を続けてきた40代女性の恋愛小説である。細君とのいざこざや会社経営、病気の悪化など、およそ若者同士の溌剌とした恋愛にそぐわない話が続く。それでも銀閣慈照寺のような質素なムードの中に、信頼や思いやりといった感情を感じることができた。
登場人物の男性をして次のようなセリフがある。印象に残る一節であった。

恋は若いときの情熱だけであろうか。出會の問題であろうか。俺の心をかきたてる情熱は、にべもなく言えば、男の本能であろう。若い時は、本能のほかに、野望も、征服感も、雑多な不純物もまざっていた。尋常に暮して、妻子にも不自由させず、仕事も一應やるところまでやった男の、その上の、また別の世界で、恋しい女と、一日でも思いをとげたいという慾望は、過去のことごとくを捨てる覚悟の上の、捨身ではなかろうか。

西湖コウモリ穴

一昨日、西湖周辺のサイクリングの途中で、「西湖コウモリ穴」と呼ばれる溶岩洞穴に立ち寄った。
総延長は350mほどの富士山麓では最大規模の洞穴である。

周囲は針葉樹林が多く、苔や地衣類が生えていた。一歩洞穴に踏み入れるとひんやりとしており、江戸時代に氷を江戸まで献上していたというのも肌感覚で理解できた。

我々人類は文明以前の太古から地表で暮らしてきたが、10mも地下に潜るとこのような別世界が広がっているという事実に改めて驚きを感じた。ジュール・ヴェルヌの『地底旅行」やディズニーシーのアトラクション「センターオブジアース」のように、地表からは窺い知れない世界に対して正しく畏れることが大切であると感じた。

山中湖〜河口湖〜西湖〜富士一周チャレンジライド

昨日、真ん中の子と一緒に富士山一周チャレンジライドに挑戦した。前日は河口湖、西湖、山中湖を一周した。気持ちよく晴れて「霊峰」の名にふさわしい富士を拝めることができた。

参加したのは「初級・中級ライド」で「富士山のふもとの細かなアップダウンを一周する110kmのルート」ということであったが、標高500mから1000mの登り下りが続き、82km地点でリタイア。もう少し走ることができたが、最後の籠坂峠を時間内にクリアするのは難しいということで、サポートカーによる回収となった。

 

参加者のスマホのGPS機能を用いて全参加者の動きを把握するという万全の体制だったので、安心して行けるところまで走ることができた。スマホの充電が切れてしまうとダメらしいが、体力やトラブルに不安を抱える初心者にはやさしい。

帰りは車で東京五輪のロードレースのコースとなった道志みち経由で帰ってきた。国道なのに嫌気が差すほどの山道であった。こんなアップダウンが続く道を真夏真っ盛りのなか走り続けるなんて常人ではない。

昨年秋に購入した自転車だが、ステム交換やクリート位置の調整などを経て、少しずつ馴染みつつある。コロナも終息に向かいつつあり、先月から半年以上休んでいた自転車通勤も再開したところである。この夏秋は巡見学習も兼ねてあちこち走ってみたい。

『疋田智の自転車生活スターティングBOOK』

疋田智『疋田智の自転車生活スターティングBOOK:とりあえずワタシはこうして走り出した』(ロコモーションパブリッシング 2006)を読む。
自転車の購入からグッズの揃え方、イベントや簡単な整備など、スポーツ自転車に乗り出すまでの入門書となっている。また自転車を楽しむ中年男性のエピソードも紹介されている。GIANTが協力しているのか、やたらとGIANT推しであったが、著者の体験に基づく内容で、読んでいて飽きなかった。