日別アーカイブ: 2023年5月27日

『東海道 水の旅』

中西準子『東海道 水の旅』(岩波ジュニア新書 1991)を読む。
著者は東京大学大学院工学系研究科合成化学専攻博士課程修し、汚水処理や下水道計画を専門とする研究者である。政府に対して意厳しい意見を投げつけていたためか、公害問題研究家の宇井純さんと同じく、東京大学都市工学科内で万年助手の立場であった。
印象に残った一節を紹介したい。

もちろん、いまの下水道がひじょうにいいというのではありません。だから、私はいまでも、あちこちの下水道計画に苦言を呈しています。しかし、やはり「これはだめだ:と主張し、それが多くの人の同感をえられれば、すこしは変わるということです。私は、この「すこし変わる」ということを、高く評価したいのです。「すこし変わるのを認めるのは、相手側に丸めこまれることだ」といい、むしろきれいに玉砕するのを高く評価するという傾向が日本の住民運動には強いのですが、私は、そういう潔癖主義で生身の社会に対処することは無益で危険だと考えています。

もちろん、いまの日本に理不尽なことが多く、いくら正論をはいても通らないことは多いのを知っています。しかし、その場合でも、よく見ると、すこしは意見が通っていることがあるのです。そのとき、だめだといわずに、少しは通ったと考えて、おたがいに励ましあい、自分の意見を主張することに希望を見いだしたほうがいいと私は思うのです。そうでなければ、世の中をよくできないと思うのです。大人の人はともかく、若い方にはぜひともこういう気の持ちようをすすめたいと思います。

本書は、東京から大阪までの新幹線の車窓から見える川の風景に、山から海までの水の流れや浄水技術、公害、安全な飲み水という点から解説を加える旅日記という形で話が進行する。ヤマハの創設者が浜松の地で天竜川で運ばれてくる木材を利用してオルガンを作り始めた逸話や、農薬に含まれている窒素やリンが海に流れ込むと、水の中にあるカリウムと絡み合って大量の藻類が発生するという話などが興味深かった。また、流れの急な大井川は上流に数多くの発電ダムが作られたため、現在では水の量が急減した話なども面白かった。

「過疎化進む足尾 観光に活路」

本日の東京新聞夕刊に授業中に紹介する予定の足尾町の過疎化に関する記事が掲載されていた。
ちょうど授業でも紹介するところだったので、興味深く読んだ。

大正時代には38,000人が暮らしていた町だが、現在では1500人余りに過ぎない。富岡製糸場や北九州の明治期の工場が世界遺産となって観光客を集めているのに肖(あやか)ってか、大正時代の産業遺産を観光の目玉にしようと、日光市が先導して再開発を進めている。

足尾銅山の坑道跡も公開されており、トロッコ列車や温泉などもあり、十分に観光地としての可能性を感じる場所である。北九州の世界遺産登録でも話題になったが、産業遺産は負の側面も併せて紹介したい。田中正造に代表される足尾銅山鉱毒事件や川俣事件なども含め、日本の行き過ぎた産業革命で苦しんだ農民にも焦点をあてた遺産登録を期待したい。

自転車整備失敗

ミヤタ自転車のマウンテンバイクリッジランナーを中古で購入して整備しようとしたが、ガタガタだったBBの整備途中でがバキッと割れてしまった。シフトグリップも購入し、Vブレーキも交換・調整をした後だったが、BBが壊れてしまっては素人では修復不能だと判断した。