月別アーカイブ: 2021年11月

『せかいどこでもずんがずんが旅』

椎名誠『せかいどこでもずんがずんが旅』(角川書店 2010)を読む。
久しぶりに一冊本を最初から最後まで読んだ気がする。東京新聞の夕刊に掲載されていたエッセーで、著者が旅したシベリアの奥地やニューギニアに浮かぶ島など、観光客がほとんど訪れない辺境の様子が紹介されている。

『東京地震地図』

宇佐美龍夫『東京地震伊地図』(新潮社 1983)をパラパラと読む。
著者は東京大学地震研究所に長らく務め、歴史地震学を専門とする。江戸時代の文献から、震源地と震度を科学的に計算し、関東地方を震源とする地震は多発しており、今後とも警戒を緩めることなく、地震災害の心得まで丁寧にまとめられた良書である。
江戸時代の初期からかなり詳細に地震の記録が残されていたという事実に驚いた。一番古い文献は818年の記録であり、マグニチュード7.9で上総・安房を除く関東各地で山崩れが発生し、圧死者が多数出たと記録されている。

「『世界の肺』大豆が破壊」

本日紹介した東京新聞の朝刊記事より。
日本の15倍を超える南米アマゾン川の熱帯雨林が、畜産の飼料となる大豆などの農地転用により破壊されているとのこと。授業の中で、熱帯雨林は面積もさることながら、厚みをみることも大切です。生物基礎の授業で、熱帯雨林の階層構造について学習します。ざっくりと説明すると、

  1. 高木層:太陽光線を直接受ける枝葉が繁る樹木
     4-5mを超える植物の内、概ね8m以上
  2. 亜高木層:4-5mを超える植物の内、概ね8m未満
  3. 低木層:高さ0.8mから2m程度
  4. 草本層:高さ0.8mから1.0m未満の維管束植物(シダ植物と種子植物)
  5. 蘚苔(せんたい)層:5~10cm以下、地表に密着したカーペット状のコケ植物
     に区分けされる

の5層構造となります。この全部が光合成するので、莫大な量の二酸化炭素と酸素の交換が行われています。ステップや亜寒帯は面積は広いですが、植生が乏しく光合成はさほど行われません。一方、熱帯雨林は厚みに注目すると、面積以上にその価値が理解されると思います。

「ハイチ 強まるギャング支配」

本日の東京新聞朝刊に、大地震や大統領暗殺などで揺れるハイチの情勢が報じられていた。
軍隊でも宗教組織でもなく、ギャングが国政を牛耳るというのは、寡聞に聞いたことがない。漫画『北斗の拳』で主人公のケンシロウが訪ね歩く街のようである。

「アフガン タリバン復権3ヵ月」

本日の東京新聞朝刊に、アフガニスタンのイスラム原理主義組織タリバンが政権に復帰してから3ヵ月を迎えた現状を報じていた。

そもそもイスラム原理主義とは、イスラム教の啓典「コーラン」を厳密に字義どおり解釈し、預言者ムハンマドの時代のイスラム共同体を復興させようとするものである。授業でも扱った、イスラム教徒の5つの義務(信仰告白・礼拝・断食・喜捨・巡礼)に基づく生活や政治、経済を目指し、欧米型の人権や民主主義よりもイスラム法による社会を築こうとする。原理主義そのものが危険な訳ではないが、力づくで原理主義を推し進めようとすると、それ以外の勢力を潰そうという発想に陥ってしまう。

ここ30年ほど米国型の金融資本主義が席巻し、世界中で貧富の格差が拡大している。同じ国民、同じ民族なのに、勝ち組の富裕層と負け組の貧困層の差が浮き彫りになっている。国内で負け組が勝ち組に憎悪を抱くようになると国は維持できなくなる。そうした溝を埋めるために、国家や宗教を全面に出した全体主義が鎌首を擡(もた)げてくる。

2001年の9.11米国同時多発テロに象徴されるように、イスラム原理主義が先鋭化した要因は、ウィナーテイクオールなグローバル経済の方にあるのだろう。