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『天皇制と共和制の狭間で』

堀内哲編『天皇制と共和制の狭間で:30代〜90代の日本のエンペラー論』(第三書館 2018)をパラパラと読む。
日本共和主義研究者の堀内氏は担当の「原発と米軍基地がなくなる『共和制日本』へ。」の項の中で、現行の立憲君主制から大統領制への移行を提案している。堀内氏は自由党(当時)や都立大学の木村草太教授の見解を参考に、生前退位は天皇個人の政治行為であり違憲だとする。さらに、皇室典範そのものが天皇の一個人としての人格を否定しているものとし、天皇制自体を維持すべきでないと述べる。そして、国民統合の象徴である現行天皇制を廃し、国民の意志が反映しやすい直接民主制の大統領制度にすべきだと主張する。

法律論的には色々な見解があるのだろうが、一般に王室(皇室)を持っている国は、国家元首(国家大権)としての機能を王室が代替するため、大統領制は馴染まないという。王室を有するイギリス連邦各国やスペイン、オランダ、タイも議院内閣制をとっている。

堀内氏は、米軍基地にノーを突きつけたフィリピンのドゥテルテ大統領を引き合いに、日本も原発や米軍基地問題などにはっきりと国民の意思を示すことのできる大統領制の実現と、それに伴う天皇制の廃絶を提言する。そのためには、「9条改憲に反対しながら『共和制移行』を模索する高度な政治」が必要だと述べる。

議員内閣制は間接民主制であり、民意を反映しにくいという意見には承服しかねるが、堀内氏のストレートな論の進め方には好感が持てる。他にも反天皇制連絡協議会の天野恵一氏や元日本赤軍リーダーの重信房子さんも寄稿されている。これからも息の長い運動であることは相違ない。

「欧米 アフガン タリバン政権人権対応に不信感」

本日の東京新聞朝刊に、アフガンのタリバンが政権発足に向けて動きを加速しているとの報道があった。

現在世界の主だった国の中で、タイとミャンマーが軍事政権となっている。どちらの国も中国の支援を受けており、政治的な自由こそ制限されるが、経済的には安定しているため、一定程度の民衆の支持が集まっていると言ってもよい。外務省の統計によると、タイの一人当たりのGDPは7,810ドル(2019年、IMF)、経済成長率は2.4%(2019年、IMF)、失業率は1.0%(2019年, IMF)となっている。

タリバン政権も中国やロシアと事前に交渉を済ませているようなので、タイやミャンマーに近い政治形態を取るのであろう。これだけ新型コロナウイルスの感染拡大で経済が停滞している以上、軍事独裁政権による危機打開を望む声は増える一方であろう。民主主義による遅々とした手続に拠らず、迅速に徹底して対応する軍事化、独裁化を選ぶ国が増加していきそうだ。

「硫黄島付近で新島」

本日の東京新聞夕刊より。
小笠原諸島・硫黄島の南50kmの「福徳岡ノ場」で火山島が形成されつつあるとの記事があった。
火山島の特徴は玄武岩という黒い火山岩石で作られるので、写真でも分かりやすい。ちなみに玄武岩の「玄」という字は「玄人(くろうと)」という言葉でも分かるように、元々黒色、転じて奥深いという意味を表す漢字である。

では、どうして火山ができるのかというと、言葉よりも教科書の図が分かりやすい。火山は地球上どこにでもできるものではなく、大半は、下図のように重い海洋プレートが軽い大陸プレートの下に沈み込む海溝から、100〜150kmほどの深部で、海洋プレートが熱で溶けて上昇することで発生する。そのため火山は海溝から100kmほど離れて、海溝に並行な位置に形成される。これを火山前線という。

次に、同じく教科書の図を紹介したい。太平洋プレートがフィリピン海プレートの下に潜り込む伊豆・小笠原海溝から100kmほど西側の火山前線上に、先ほどの「福徳岡ノ場」がぴったりと位置することが分かる。見比べてみてほしい。伊豆諸島や小笠原諸島もすべて狭まる境界が生んだ火山島である。

また、静岡県・伊豆半島も2000万年ほど前に海洋上に誕生した火山島であった。それがプレートの動きによって本州にぶつかって半島になったものである。地球の動きを感じるよね。

「米誤算 タリバン進攻防げず」

本日の東京新聞朝刊より。
アフガニスタンの反政府武装組織タリバンが一気に首都カブールまで進攻し、米国が20年にわたって作ってきた親米ガニ政権が一気に瓦解してしまった。驚くほど早いスピードである。この背景には、これまでの欧米型民主主義政権が軍事力をちらつかせてイスラム教の柱である政教一致を否定しきたため、タリバンの唱えるイスラム原理主義に対し一定程度民衆の支持が集まったと考えられる。

また、中国政府がタリバン政権に期待感を表明しているように、中国やロシア、パキスタン、イラン、カザフスタンなどの周辺国がタリバンを裏で支援しているとの報道もある。特に中国は新疆ウイグル自治区との軋轢を抱えているので、アフガニスタンの安定には気を遣うであろう。

外務省のデータによると、アフガニスタンの一人当たりのGNIはたったの530ドル(世界銀行2019)しかない。世界で一番貧しい国といってよいであろう。テレビニュースを見ても誰一人マスクを着用していない。マスクそのものが流通していないと考えられる。

日本が取る道は米国に追従して金を出すことではなく、人道支援の観点から難民の受け入れ体制を作ることである。外務省は「我が国の人道支援方針」の中で、次のように定めている。

人道支援とは一般に,人道主義に基づき人命救助,苦痛の軽減及び人間の尊厳の維持・保護のために行われる支援をいう。難民,国内避難民,被災者といった最も脆弱な立場にある人々の生命,尊厳及び安全を確保し,一人一人が再び自らの足で立ち上がれるよう自立を支援することがその最終的な目標である。このため我が国としては,人道支援は,緊急事態への対応だけでなく,災害予防,救援,復旧・復興支援等も含むものとして認識している。

人道支援の基本原則は,「人道原則」,「公平原則」,「中立原則」,「独立原則」であり,我が国はこれらの基本原則を尊重しつつ人道支援を実施する。
 人道原則とは,一人一人の人間の生命,尊厳及び安全を尊重することである。公平原則とは,国籍,人種,宗教,社会的地位又は政治上の意見によるいかなる差別をも行わず,苦痛の度合いに応じて個人を救うことに努め,最も急を要する困難に直面した人々を優先することである。中立原則とは,紛争時にいずれの側にも荷担せず,いかなる場合にも政治的,人種的,宗教的及び思想的な対立において一方の当事者に与しないことである。独立原則は,その自主性を保ちつつ人道支援を実施することである。

上記の「人道支援方針」を読めば、今回のアフガニスタンの混乱による難民の受け入れこそ、日本が取るべき道であることが分かると思うが、皆さんはどう考えるか。