小原嘉明『オスとメス 求愛と生殖行動』(岩波ジュニア新書 1986)をパラパラと読む。
著者は動物行動学の専門家で、モンシロチョウを中心に様々な昆虫や動物の生殖行動を科学的に分析している。しかし、最後に人間の性について語るのだが、色々と議論の分かれる部分であろう。
メスあるいは女というものは、どういうものかということを思い出してほしいと思います。メスあるいは女という性は、基本的に求められる性であり、相手の性を選択する性であること、そしてよりよい選択をしたメスが、より大きな生殖成功、あるいは幸せを手にできるということを、もう一度思い起こしてほしいと思うのです。
たとえば、オスのプレゼントが自分の生殖成功を高める価値のあるものだとわかるまでは、決して交尾を許さないツマグロガガンボモドキの慎重でかしこい行動を思い出して下さい。交尾をのばしのばして、ついにオスを子育てにひきこむコマドリの行動を思い出して下さい。メスは、交尾に「はじらいをもつ」ことで、オスの素質や熱意のあるなしなどを、十分にチェックできるのです。
このことは、そのまま人間にあてはまるものではないかと私は思います。