田中義恭・星山晋也編著『目で見る仏像・大日/明王』(東京美術 1986)を読む。
大日如来とは、毘盧舎那仏とも称され、密教において全ての仏の中心と考えられている。密教という言葉だけを聞くと、ダークな反主流派というイメージが強い。しかし、平安時代の空海(弘法大師)がもたらした真言宗(東密)や、最澄(伝教大師)を祖とする天台宗(台密)などが広く知られている。
仏教は元来、秘密の儀式、平易に言えば家事祈祷の類を極力否定し、個々の人々がそれぞれの苦悩を克服することが意図されていた。しかし、インドでは祈祷や呪いが古くから盛んで、仏教はそうしたインド的な要素も取り込みながら発展してきた。日本の仏教は宗派を問わず密教的要素を含むことが大きな特色となっている。
そして、大日如来の表現の一つが明王であり、不動明王や孔雀明王、愛染明王、金色夜叉明王などは日本でも広く信仰されている。関東では特に不動信仰が盛んで、なかでも成田山新勝寺の成田不動が著名で、江戸時代には成田詣は往復3日のレクリエーションともなっていた。その他にも、日野の高幡不動、相模の大山寺が知られ、江戸の護りとして造立された竜泉寺の目黒不動、新長谷寺の目白不動、小松川最勝寺の目黄不動、駒込南谷寺の目赤不動、世田谷教学院の目青不動が有名である。
また、平安時代の不動明王の写しを載せる『不動明王図鑑』には、宇治拾遺物語の「絵仏師良秀」で知られる、良秀の「よじり不動」と称された絵も掲載されている。
それにしても、五大明王の一つである5眼の金剛夜叉明王はエヴァンゲリオン2号機にそっくりである。